木走日記

場末の時事評論

あなたは新(ネオ)・階級社会を生き残れるのか〜『這い上がれない未来』を読んで

kibashiri2006-01-06




●06年を考える ポスト平等社会 「格差拡大」社会を憂う

 昨日(5日)の毎日新聞社説から・・・

社説:06年を考える ポスト平等社会 「格差拡大」社会を憂う
 ◇セーフティーネット拡充を

 「一億総中流」社会からポスト「平等」社会へと変化が始まっている。所得の二極化が進み、上流・下流という呼び方に象徴されるような階層の固定化が進んでいるからだ。

 だが「総中流」社会の後に、どんな社会を目ざすのかが見えない。将来の展望が描けず、所得格差がさらに開いていくのではないか。そういう不安が「不平等感」を増幅させ、ポスト「平等」社会の姿を見えなくさせている。

 国民の中流意識の変化は社会現象から読み取れる。変化の兆しは20年前のバブル期にあった。そのころ「マル金マルビ(金持ち、貧乏)」というフレーズが生まれた。90年代後半には、嫌な言葉だが「勝ち組、負け組」が流行語となり、今ではすっかり定着してしまった。

 最近では「不平等社会日本」「日本の不平等」「下流社会」といった本も話題を集めた。「所得格差」や「不平等」という言葉に国民が敏感になっている。

 ◇バブル後に格差が加速

 では、実際に日本で所得格差の拡大が進んでいるのか。「日本の不平等」の著者である大阪大学社会経済研究所の大竹文雄教授が総務省の「家計調査」のデータから、所得格差の指標としてよく用いられるジニ係数を計算した。その結果「60年代には所得格差の平準化が進んだが、70年代にゆっくりとした不平等化があり、80年代の半ばには不平等化のスピードが上がった後、90年代末以降は不平等度がほぼ一定で推移してきた」と指摘している。

 80年代からの所得格差拡大の主要な要因は人口の高齢化と単身・2人世帯の増加だと大竹教授は分析している。成功・不成功でもともと所得格差が大きい高齢者の比率が高まれば、経済全体で見た所得格差が拡大するという説明だ。所得の少ない高齢者や若者の単身世帯、2人世帯が増えれば、これも統計上は格差拡大となる。

 ただ、80年代後半のバブル期と90年代後半のバブル崩壊後では格差拡大の様相が大きく変わった。90年代後半に入って、企業は生き残りをかけてリストラを進め、失業率が高まり、賃金制度も年功制から成果型を導入する企業が増加し、賃金格差が広がっている。

 労働運動が高度成長期のように「横並び賃金」を要求しなくなり、勝ち組と負け組企業でベースアップに格差が生じてきた。

 学校を卒業しても就職できず、フリーターになる若者も急増した。15〜34歳の若年層のうち学校卒業者で仕事をせず職業訓練も受けていない無業者を意味する「ニート」も増えている。その一方で、IT長者の若者が増え、ヒルズ族などと、もてはやされている。

 雇用・労働の構造的な大変動があり、正社員と非正規社員という働き方によって所得がこれまで以上に二極化しているのが現実だ。

 ここでは正社員と非正規社員の所得の二極化を見てみたい。正社員とフリーターでは所得に大きな格差がある。厚生労働省の「就業形態の多様化に関する総合実態調査(04年)」によると、非正規社員の37%が月収10万円未満、10万〜20万円未満が41%だが、正社員は8割が20万円以上だ。

 親の所得が低く、低学歴の若者たちがフリーターになるという傾向も指摘されており、これが階層の固定化をもたらしている。

 働き方も大きく変わった。学校卒業後に、ほぼ全員が正社員として働くということが当たり前の時代は終わった。企業は生き残りをかけて正社員から低賃金の非正規社員への切り替えを図っており、いまでは雇用者3人に1人が非正規社員だ。いったんフリーターになると、正社員への門戸は狭い。こうして「フリーター・非正規社員」階層が固定化され、ますます格差社会になっていく。

 競争を是認する社会である以上は「結果の不平等」がついて回る。市場主義を掲げ「官から民へ」と繰り返し主張する「小泉改革」によって所得の二極化に拍車がかかっている。

 所得格差は能力や努力の結果であり、それを不平等だとして平準化を求めれば、社会や企業から活力が失われてしまう。

 ◇「機会の不平等」が問題

 問題は「機会の不平等」だ。親の所得が低いために進学を断念し、学歴の壁で就職の機会を失いフリーターにならざるを得ないとなれば、社会の沈滞につながる。これらは「機会の不平等」の一例だが、それによって「結果の不平等」が深刻化する社会になれば、国は活力をなくしてしまう。

 とはいえ、現実には「機会の不平等」が広がりつつある。多くの国民に不平等感が高まっているのは格差社会を目の当たりにした無力感の裏返しなのかもしれない。

 「下流」であっても努力や能力次第で所得が上がっていく社会にするためには「機会の平等」が必要だ。失敗しても再チャレンジが可能な社会にすべきである。親の収入などによって子供の人生にあらかじめ格差がつくのは望ましい姿ではない。

 経済のグローバル化の下で、格差社会が世界で加速しており、今後さらに所得の二極化が拡大する可能性が強まっている。

 格差が拡大する社会にとって重要になるのはセーフティーネット(社会的安全網)だ。パートから正社員への道が開けないなどの理由で低所得になっている人、さらに職業人生の途中で病気や障害によって所得が大きく減る人たちのためには社会保障をはじめセーフティーネットが必要だ。格差社会では、社会の安定を損なわないためのセーフティーネットをどう構築していくかが課題になる。

毎日新聞 2006年1月5日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060105ddm005070025000c.html

 うーん、これは考えさせられる社説であります。

 確かに小泉政権が押し進める新自由主義政策のもとで「所得の二極化が進み、上流・下流という呼び方に象徴されるような階層の固定化が進んでいる」のでしょう。

 「所得格差は能力や努力の結果であり、それを不平等だとして平準化を求めれば、社会や企業から活力が失われてしまう。」のはそうでしょうが「とはいえ、現実には「機会の不平等」が広がりつつある。多くの国民に不平等感が高まっているのは格差社会を目の当たりにした無力感の裏返しなのかもしれない。」だとすれば、事態は深刻なのであります。

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●あなたは新(ネオ)・階級社会を生き残れるのか〜『這い上がれない未来』を読んで

 すごい本を読みました。

 『這い上がれない未来 Never-Climbing Society』(光文社ペーパーバックス:藤井 厳喜 (著))http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334933718/250-0207485-5446604)です。

 この本によれば、日本では「超・格差社会が到来するのだそうです。

 「金持ち」the rich「貧乏人」the poorがいま以上にはっきりする社会。「勝ち組」winners「負け組」losersが当たり前のように別れて暮らす社会と言い換えてもいい。要するに、格差gapがどんどん拡大した「階級社会」class societyである。

 (中略)

 そこで、本書では、これを「新・階級社会」neo class-societyと名付ける。

 (中略)

 この「新・階級社会」の特徴は、階級classとしては最下位の下流”lower class(貧乏人と負け組)が圧倒的に多くなるということである。”下流”という言葉は三浦展氏の著書『下流社会』(光文社新書2005)で一般的になったが、つまり、これまでなんとか「中流」middle classに踏みとどまっていた人が、次々に下流に転落sinkingしていくのがこの社会の最大の特徴であるということだ。
 では、どんな人が下流に転落してしまうのか?




『這い上がれない未来 Never-Climbing Society』本書を読む前に(7ページより抜粋)

 著者はすごい確信を持った筆致で日本が近い将来『新(ネオ)・階級社会』になることを論じていきます。

 もう冒頭から読者は、著者の力強いイントロダクションに、ぐいぐい引き込まれていくのであります。

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●「負け組チェックシート」でチェック〜あなたは新(ネオ)・階級社会を生き残れるのか

 で、気になる「どんな人が下流に転落してしまうのか?」ですが、著者は前書き部分で「負け組チェックシート」みたいなものを用意しています。

 当ブログの読者のみなさまも、このチェックシートに応えるとますますこの本を読みたくなるかもですから、ここでご紹介してみましょう。

 以下の質問に「○」か「×」で応えてみてください。

①2005年9月に行われた総選挙で小泉自民党に投票した
②よく見るテレビはフジテレビ(フジ系列)である
③英語は苦手で、はっきり言って話せない。また、日本にいる以上、英語は必要ないと思う
郵便貯金をしている
⑤できれば「週末起業」をしてみたいと思っている
⑥Jリーグやプロ野球に、ひいきのチームがいる
⑦仕事以外でパソコンやけーたいを頻繁に使っている
⑧「成功するための〜」という類のハウツー本をよく読む
⑨「オンリーワン」や「個性的」という言葉が好きだ
⑩公務員がもっとも安定した職業だと思っている
⑪結婚は二人に愛があることが第一の条件である
⑫こだわりのブランドがある(服、時計、バッグなど)
⑬海外旅行にも行くが、どちらかといえば国内旅行のほうが好きだ
⑭ワード、エクセルはできるがパワーポイントはできない
⑮日本車より外車のほうが好きだ
⑯女性は身だしなみとしてお稽古事(お茶、お花、ピアノ)の一つぐらいはすべきだ
⑰一生独身でいる生き方もあっていいと思う
⑱教育にお金をかけるのはムダだと考えている
ホリエモンや村上世影氏のようなビジネスのやり方には賛成できない
成果主義は日本人には合わない

 さて、あなたはいくつ「○」をつけたでしょうか?
 著者の分析はこうです。

20項目のうち、「○」が5以下なら、あなたはなんとか中流にとどまれる可能性がある。6〜10なら、それもかなり危なくなる。しかし、11以上「○」を付けたなら、あなたは、ほぼ「下流転落」間違いなしである。また、16以上なら、「新(ネオ)・階級社会」での完全な「負け組」となるのは確実だろう。
ではなぜ、そうなるのか?
それは本書全体を読んでいただければ納得がいくはずである。

 理由が気になる方は是非本書をお読みくださいませ(笑)。

 ひとつだけ簡単に例を示してみると、著者によれば、2005年9月に行われた総選挙で小泉自民党に投票した層は、その後の調査で、都市部の負け組サラリーマンが中心だったことを示しているのだそうです。

 また、著者によれば下流ほどブランド志向が強いのだそうです。

 ・・・

 その論法は、いささか強引ではと感じる箇所がなくはないですが、とてもおもしろかったです。そして、深く考えさせられました。

 しかし、この筆者は筆力がすごいなあ。

 著者である藤井厳喜(ふじいげんき)氏のホームページはこちらです。

藤井厳喜OfficialWebsite(写真もここから転用)
http://www.gemki-fujii.com/index.html

 『這い上がれない未来』、「新(ネオ)・階級社会」に関心のある人には必読の書であります。

 今年最初の当ブログ一押し本であります。

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 ところであなたのチェック結果は、「勝ち組」「負け組」いかがでしたでしょうか?



(木走まさみず)

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