木走日記

場末の時事評論

『日米蜜月』の今だから思い出したい『ジャパンパッシング』の頃

●インターネットは誰のものか?〜国家統制に批判相次ぐ 米主導のネット管理で

 17日の産経新聞から・・・

国家統制に批判相次ぐ 米主導のネット管理で

 チュニジアの首都チュニスで開かれている世界情報サミットは17日、インターネット管理の在り方について、米非営利団体が一手に担っている現状から、各国政府による統制に変えるべきだとの意見を中国などが表明したが、支持を得られなかった。

 逆にそれまで米国に異を唱えていた国が急に反対意見を引っ込め、「政府管理の肥大化より民間主体の現状の方が望ましい」(交渉筋)との声が大勢を占めるようになった。

 サミットに出席していた国際商工会議所(本部パリ)のセバン事務総長は「政府は日々の細かな運用はできない。(やれば)かえって混乱を招く」と指摘した上で、政府の役割は「環境整備に専念し民間の投資を促すことだ」と強調した。

 国家による統制を求めたのは中国のほか、ブラジルなど。出席者は「サミットに名を借りて国内でのネット規制を強化しようとしたが、思惑が外れた」と話す。

 インターネットのドメイン名などの管理は、直接的には米商務省監督下の民間非営利団体が当たっている。世界各国で構成される理事会がドメイン名の割り当てなどを決定するが、米政府は拒否権を持っている。このため欧州連合(EU)などが米国による意図的な運用の余地があると見直しを求めている。(共同)

(11/17 18:36) 産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/051117/kok061.htm

 この問題実に奥が深いのです。

 言うまでもなく、インターネット発祥の地は米国であり、現在インターネットを実質的に独占的に管理して牛耳っているのは米国一国だけであり、このニュースはそうした現状のアメリカ独占のネット管理体制の見直しが大きな論点になっています。

 中国やブラジル・イランを中心にし、欧州連合(EU)諸国をも含む各国などが噛みついているのは、こうした状況に対して、米国の一元管理で、恣意(しい)的に運用される懸念があると不満を持っているわけです。

 記事にも「インターネットのドメイン名などの管理は、直接的には米商務省監督下の民間非営利団体が当たっている」とありますが、この民間非営利団体とは、米政府と契約を結んだ米カリフォルニア州の民間団体、「インターネット名称番号割り当て協会」(ICANN:Internet Corporation For Assigned Names and Numbers)のことであります。

Internet Corporation For Assigned Names and Numbers
http://www.icann.org/
ジャパンICANN
http://icann.nic.ad.jp/

 ご存知の通り、インターネットのアドレスは、ネット上の住所を割り振る仕組みであるドメイン名システム」により管理されています。

 この「ドメイン名システム」を一元的に管理しているのが民間団体ICANNなのです。

 で、中国などがなぜ現状に不満なのか以下の産経の記事が読みやすく解説しています。

インターネットは誰のもの? 米一極支配に反発 中国・欧州など国際管理を主張 

(前略)

≪中国、独裁維持 新たなツール≫

 【北京=野口東秀】インターネット人口が1億を超す中国では、政府がネットを国家発展の柱と位置付けつつも、一党独裁を維持するために新たな情報ツールを管理下に置くのに躍起で、情報の発信、閲覧とも当局の統制が強まっている。

 2000年には、「湖北省幹部に収賄の疑い」という香港報道を転載したポータルサイトの管理業者が風説の流布を理由に初の処分を受けた。非合法化されている気功集団、「法輪功」のサイトは国内での立ち上げはもちろん、海外サイトへの接続も規制されている。

 台湾のドメイン名「.tw」を含むウエブサイトには、国際回線を経由しない限り、中国国内からの接続は規制される。電子掲示板には、「デモ」や「民主化」を示す単語はそのままでは書き込めず、微妙な単語は漢字の間に「・」などの記号をはさむことになる。

 中国政府がネットの国際管理を唱えるのは一つには、米国主導のネット管理ではこうした規制が弱まるとの懸念からだ。

平成17(2005)年11月17日[木] 産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/051117/morning/17int003.htm

 つまり、中国などは情報ツールを管理下に置くのに躍起になっているわけですね。

 しかし、それだけではありません。

 上記記事にもイランの例が出ていますが、例えば、中国に割り当てられているドメイン名の「.cn」を書き換える権限はICANN、つまり米政府が握っているわけで、米政府は政治的な運用は行わないとしてはいるものの、その気になれば「.cn」が停止されれば、中国が大混乱に陥るのは必至であるわけです。



アメリカンスタンダードの極致〜残念ながらインターネットはアメリカ標準だ!

 私はIT関連業を生業にしておりますので、この辺の事情は仕事柄よく理解しているつもりですが、中国やブラジルの「米非営利団体が一手に担っている現状から、各国政府による統制に変えるべき」という主張は全く非現実的であり同意できるものでは到底ありません。

 現状のアメリカ独占管理が最善であるとは申しませんが、そもそもインターネットの通信プロトコルであるTCP/IPにしたところで、またすっかりLAN標準になりつつあるEthernet【イーサネットにしたところで、今日のネットの基本体系はほぼ全てアメリカが主導して開発構築されてきたものばかりであり、他のどの国が管理したところでアメリカほど公正に運用する能力を持った国など世界中に一国もありはしないのです。

 ネットの世界は良くも悪くもアメリカンスタンダードの極致なのであり、そのお陰で世界中のどこからでもインターネットに参加できる公正なシステムに仕上がっているわけです。

 特にビジネスパソコンのOSの分野では、WindowsやMacなど、USA生まれでないOSを探すのが至難の業でありまして、日本なども一部組み込み系でTRONとかはがんばってはいますが、ほぼアメリカ独占状態であります。

 例えばネットとは少しずれますが、カーナビなどでお馴染みのGPSにしたところでアメリカの軍事衛星からの電波が無償で公開受信できるから世界中で使用できるわけです。
 アメリカはその辺り実にダイナミックに戦略を立てている気がします。

 GPSにしろインターネットにしろアメリカ主導のアメリカ標準の技術を世界標準として全世界で事実上無償で公開することで、実はアメリカ系企業は極めて有利にビジネス戦略を構築できているのは有名な話であります。

 いくつかのIT分野においては世界中の企業が束になってかかっても、米企業グループにかなわないのは、ある意味当然なことなのであります。

 このようなアメリカ独占の状態が健全でないことはその通りですが、少なくとも現在の状況で中国などに管理を委ねることは、まったくのナンセンスなのであります。



アメリカは所詮わがままな国〜全てアメリカ中心にしか考えられない

 以前も一度当ブログで紹介いたしましたが、私の仕事仲間でかつ飲み仲間のスティーブは、今は某ITメーカーの研究員として働いている日本滞在10年になるアメリカ人中年デブ(苦笑)であります。

 最近彼は仕事の関係で東京のアメリカ大使館によく出入りしているらしいのですが、一昨日彼との雑談でとてもおもしろい話を聞きました。

 スティーブ自身は、典型的な北部出身のWASP(白人アングロサクソンプロテスタント教徒)でありまして、ちなみに共和党支持者であります。

ティー「大使館の事務方が日本のメーカーの対応に怒っているんだよ」
木走「何の話?」
「ブッシュさんが来日しただろう。その関係でコピーとかFAXとか臨時でレンタルしたのだが、日本のメーカーの対応がすこぶる悪かったんだってさ」
「どういうこと?」
「キミも知っているだろう、アメリカと日本じゃコピー用紙ひとつとってもサイズがちがうんだ。だからレンタルする機械もアメリカ輸出用のアメリカ用機械じゃないと困るんだ。あと、セキュリティのチェックは大使館側で出来ないと困るんで、電子残像を消去できる最新型じゃないと困るわけだが、それが必要な台数分確保するのに大騒ぎだったらしい」
「ふーん。でもそれは少し日本のメーカーに同情すべき内容じゃないかな。限られた時間でそんな厳しい条件ではレンタル機を確保して設置するメーカー側でも大変だったんじゃないかな」
「だってアメリカ資本のXXX社はすぐ用意できたんだぜ。日本はこの辺が本当に遅れているんだよな」
「なんでもアメリカ方式がスタンダードって考えるのは君たちの悪い癖なんじゃないかな」
「・・・」

 ここまでの話でもうヤレヤレであります。(苦笑)

 まったくアメリカ人というのは全てアメリカ中心にしか考えられないのでしょうか?  

 確かに日本じゃ事務用用紙はA4とかB5とかが標準でアメリカとは全然サイズがちがうわけですが、国がちがうのだから当然であり、別にアメリカに比べて「遅れて」いるわけじゃないでしょう。



●日本人はみんな健忘症なんじゃないのか〜アメリカの一貫した極東戦略はただひとつ

 で、話は日米首脳会談に移りました。

「話は違うけど、今回のブッシュ訪問だけど、小泉首相ブッシュ大統領の仲の良さばかり目立っていたけど、アメリカ人から見てどう評価してるのよ」
小泉首相の発言があまりに日米枢軸一辺倒なんで正直大使館の連中も驚いていたよ。日本人はみんな健忘症なんじゃないのかって言っていた」
「健忘症?」
「確かに今のブッシュ政権は日本贔屓だけれども、歴代のアメリカ大統領の中でも民主党政権の対日政策を忘れているじゃないかってことだよ。思い出してみればいい、ブッシュさんの前のクリントン政権時代には、米中接近を進める一方で日本に対しては徹底的に冷遇する政策をとっただろう。日本じゃ『ジャパンバッシング(日本敵視政策)』じゃなくて『ジャパンパッシング(日本無視政策)』とかいって大騒ぎしたじゃないか、まだ6,7年前のことだよ」
「うん、そうだったね」
「戦後一貫して極東におけるアメリカの基本外交戦略は一貫しているんだぜ。日本じゃ最近小泉首相が日米枢軸一辺倒だけど、アメリカの政策は一貫して日本重視では決してない。かつての日本を無視して中国と国交を成立させたニクソンショックから今日まで、中国重視政策の時代も何回もあったんだ」
「たしかにそうだけどブッシュ政権は日米重視だろう。それに最近の中国の台頭はアメリカにとっても頭の痛いことなんじゃないのか」
「まだわからないのかい。アメリカの極東戦略はただひとつ、アメリカに対抗するような『日中蜜月』を絶対に許さないというものなんだよ。この一点だけは、アメリカの政権である限り、親日的政権であろうと親中的政権であろうと、共和党政権であろうと民主党政権だろうと基本的に一緒なんだ」
「なるほど」
「ブッシュの次の政権がどうなるか知らないが、小泉首相の日米枢軸重視政策は、現状認識としては正しいがいつまで正しい戦略として機能するかは、アメリカの政権次第でわからんということだよ」
「・・・」
アメリカ大使館には2種類の人種がいるんだ。その2種類というのは政権が変わると入れ替わる政権よりの幹部連中と、長く務めているスタッフとだがね。今回の小泉発言で喜んでいるのは共和党政権よりの幹部達だけで、クリントン時代も知っている長く務めているスタッフ達はみんな呆れているんだ。そんなにアメリカを信じていいのかってね」
「・・・」
「確かにアメリカにとっては小泉首相はブレア英首相とともに最高のパートナーだよ。アメリカが何をしでかしても追従してくれるからね」
「うーむ・・・(汗」

●『日中蜜月』だけは許さないわがままな国アメリ

 19日の朝日新聞から・・・

新たな追悼施設に慎重姿勢 麻生外相

 麻生外相は19日、大分県別府市で記者会見し、新たな戦没者追悼施設の建設について「かなり日本の世論は割れている。世論が割れている話に税金を使うのは、慎重に考えないといけない」と述べ、来年度予算での調査費計上に否定的な見方を示した。

 18日の日韓首脳会談では、盧武鉉ノ・ムヒョン)大統領の年末の訪日で合意できなかったが、麻生外相は「会わないから急に日韓関係が断絶状態になるという話でもない。そう取り立ててワーワーいう話でもない」と述べた。さらに、「来てもらうために日本は何を譲るのか。それが靖国の話になっていくのは正しいのか」とも語った。

 これに先立つ講演で麻生外相は「新聞では世界で孤立化したように書くが、そんなことはない。米との軸はきちっと守って、その上でその他の国々とやっていくという小泉内閣の方向、選択は間違っていない」と述べ、首相の「日米最優先」路線を支持した。

2005年11月19日18時33分
http://www.asahi.com/politics/update/1119/004.html

 小泉首相の外交路線を忠実に守る麻生外相の発言なのでありますが、

「新聞では世界で孤立化したように書くが、そんなことはない。米との軸はきちっと守って、その上でその他の国々とやっていくという小泉内閣の方向、選択は間違っていない」

 確かに、今回の日米首脳会談では、『日米蜜月』は強烈に印象づけられる格好となりました。

 この日米関係は、今後中国、そして韓国との外交関係に対してどのような影響を及ぼしていくのか、いよいよ日本外交の真価が問われることになることでしょう。

 したがって、日米関係を基軸に考えること自体全く異論はありません。

 しかし、ただあまりアメリカの外交政策を盲信して追随していると、いつはしごをはずされるとも限らないかも知れません。

 もう少し外交面で柔軟に多様な選択肢を担保しておく必要はないのでしょうか?

 ・・・

 私達日本人はクリントン政権時代のアメリカ政府のとった『ジャパンパッシング』政策を思い出すことが必要なのかも知れません。

 当時と今では中国の経済力も軍事力もちがいますし、単純に比較することはできないでしょう。また、ブッシュ政権以後これから将来のアメリカ政権がどのような外交政策をとるかは全くの未知数でありましょう。

 だがしかし、当時もクリントン政権が日本を無視して『米中蜜月』時代を構築し始めた時、日本政府もマスコミも予想しなかった出し抜かれた感じの狼狽ぶりであったのは、まだ私達の記憶に新しいところです。

 ただでさえ不況下にあった当時の日本メディアの、とても自虐的で惨めな論調を私たちは自戒を込めてけっして忘れてはいけないのでしょう。



 アメリカは所詮きまぐれでわがままな面を持つ超大国なのであります。



(木走まさみず)