中韓キムチ紛争で思い出したキム君の自家製キムチの話
●中韓キムチ“紛争”勃発!
昨日(2日)の読売新聞から・・・
【ソウル=中村勇一郎】韓国政府が中国産キムチから寄生虫の卵が検出されたと発表し、国民の間で中国製食品への不信感が高まっている。
反発した中国側は韓国産キムチの検査を実施し、寄生虫の卵が検出されたと発表。両国間で貿易摩擦の火種となる恐れが出ている。
韓国の保健福祉省などは先月21日、韓国で流通している中国産キムチ16品に対する調査で9製品から回虫など4種類の寄生虫の卵を検出したと発表。国民食であるキムチの問題だけに不安は急速に広まった。
韓国では安価な中国産キムチが年々増加し、飲食店で出されるキムチの20%近くが中国産といわれる。国民の間では自らキムチを漬ける防衛策も広がり、国産白菜の価格が高騰し始めている。韓国政府は中国産キムチの通関検査の強化に乗り出した。
これに対して中国政府も31日、韓国産キムチなど10品目から寄生虫の卵が検出されたと発表した。韓国メディアでは「対抗措置」との見方が広がっている。
韓国政府は貿易摩擦への発展を避けようと、今月15日から釜山で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、キムチ問題の韓中協議体を発足させる方針だ。
(2005年11月2日3時31分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20051101i316.htm
うーむ。
これはなにやら不可解な紛争ですな。
「韓国政府が中国産キムチから寄生虫の卵が検出されたと発表し、国民の間で中国製食品への不信感が高まっている」そうでありますが、「反発した中国側は韓国産キムチの検査を実施し、寄生虫の卵が検出されたと発表」とは、中国も大人げない。
一昨日(1日)の中国情報局ニュースから。。。
キムチなど韓国産10品目から寄生虫卵、輸入停止へ
中国国家品質監督検験検疫総局(AQSIQ、質検総局)は31日、韓国産キムチ製品など10品目から寄生虫卵が検出されたとして、同10品目の輸入を停止するとともに、韓国から輸入される同類製品に対する検査を強化することを発表した。中国の国営テレビ、中国中央電視台(CCTV)が伝えた。寄生虫卵が検出されたのは、キムチ製品7品目、とうがらし製品2品目、焼肉用調味料1品目。
質検総局は、これら10品目および関連製品の輸入を即日禁止するとともに、各地の出入境検験検疫局に対して、韓国から輸入される同類製品の検査を強化し、不合格製品の輸入を差止めるなどの処理にあたるよう求めた。
また、すでに市場に出回っている不合格製品の回収作業の徹底を呼びかけるほか、消費者に対して韓国産の同類製品の購入は慎重に行うよう注意を促した。(編集担当:伊藤亜美・如月隼人)
2005/11/01(火) 13:21:57更新 中国情報局ニュース
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=1101&f=business_1101_008.shtml
中国政府は「消費者に対して韓国産の同類製品の購入は慎重に行うよう注意を促し」ているそうですが、なんだかなあ、中国は韓国側の発表によほど腹を立てていたのでしょうねえ。
韓国紙にそのあたりの事情の詳細が報道されていました。
昨日(2日)の韓国・東亜日報の記事から・・・
韓国産キムチの輸入禁止の理由は?
韓国産キムチなどから寄生虫の卵が検出されたという中国の発表は、事実だろうか。
有害食品に対する調査と輸入禁止の措置は、いかなる国であれ保有する権利だ。
しかし、韓国食品業界と食品医薬品安全庁(食薬庁)は、中国にキムチを輸出したこともないと明らかにしており、騒動の真相に関心が集まっている。
●中国の発表は疑問だらけ
1日、食薬庁と業界によると、今年に入って中国に輸出されたキムチは16tだ。
このうち、中国の検疫当局が、キムチから寄生虫の卵が検出されたと明らかにした東遠(トンウォン)、斗山(トゥサン)、CJ、プルムウォン、トトゥラクなどは今年、中国にキムチを輸出していないことが確認された。
東遠は中国にキムチ工場はあるが、すべて日本に輸出している。
斗山は中国でキムチを売ってはいるものの、現地で作ったものなので、中国が明らかにした「韓国産輸入食品」には当たらない。
中国当局が指摘した業社と製品の名前が不明確で、本当に韓国企業が作ったキムチなのかどうかも明らかでない。
検疫当局のホームページには、東遠の「両班(ヤンバン)キムチ」を「東源」の「士大夫(サデブ)キムチ」とし、「東遠」を「東源」と誤って表記した。
斗山の「宗家(チョンガチプ)キムチ」も、現地で流通している商品名(宗家府)ではなく、「宗家」を音のまま表記した「中加吉」と記した。
また、コチュジャン(唐辛子みそ)と焼き肉のたれは中国に輸出されてはいるが、殺菌処理の過程を経るため、寄生虫の卵が残る可能性はゼロに近いというのが食品専門家らの見解だ。
食薬庁の李昌濬(イ・チャンジュン)食品安全政策チーム長は、「寄生虫の卵は摂氏70℃で1秒、60℃で5秒以上加熱すると死ぬ。韓国の業社は、コチュジャンは85〜95℃で5分間、焼き肉のたれは85℃で2〜5分間殺菌処理するので、寄生虫の卵が残る可能性は薄い」ことを明らかにした。
●不満うっ積による報復か
在中韓国大使館と在韓中国大使館の関係者は最近の事態について、「昨日今日のことではなく、中国には不満がたまっている」と、口をそろえて述べた。
外交通商部によると、中国はキムチ、茶、うなぎなどの中国産輸入食品の有害性問題が起こるたびに、韓国の発表や処理方法に対して不満を表わしてきた。
中国の李長江検疫総局長は先月26日、中国北京で開かれた呉巨敦(オ・ゴドン)海洋水産部長官との会談で、「中国に輸入されている韓国産製品にも問題があるが、私たちは対外的な発表に力を入れない」と述べた。
食品から有害物質が検出された時、即時に国民に発表する韓国の方針に不満を示したのだ。
法務法人ユルチョンの鄭永珍(チョン・ヨンジン)弁護士(通商専門)は、「食薬庁と業界の説明どおりなら、今回の事態は中国の典型的な『力による報復』とみられる」と話した。
●全面戦争は両国政府いずれにも負担
中国が韓国産に対して有害性を主張し、韓国が違う分析結果を出す可能性も少なくない。
世界貿易機関(WTO)の「衛生及び植物検疫措置の適用に関する協定(SPS)」は、「有害性に対して客観的かつ科学的根拠がある場合、輸入を禁止できる」と規定しているが、「客観的かつ科学的根拠」の概念はあいまいだ。東国(トングク)大学国際通商学部の郭魯成(クァク・ノソン)教授は、「両国が共同調査する案が最も合理的だ」としながら、「すでに両国が、『韓中品質検査検疫協議体』を早期に稼動することを決めているので、適正ラインで妥協が成立するだろう」と予想した
専門家らは、今回の措置が中国の警告性の報復だとしても、全面的な通商摩擦に飛び火しないと見ている。全面戦争をするには、両国いずれにも負担が大きいためだ。中国は昨年、米国を抜いて韓国の最大交易国に浮び上がった。華僑圏の香港、バージン諸島を除けば、韓国は対中国投資1位の国だ。
中国がWTO加盟国になったことで、過去のニンニク紛争の時のように、一部の食品問題を他の商品への輸入規制に拡大することはないだろうという分析も出ている。
鄭弁護士は、「中国が他の製品に対して貿易報復をするには、『関税および貿易に関する一般協定(GATT)』11条など、多くのWTO規定を破らなければならないため、容易ではない」と説明した。
NOVEMBER 02, 2005 05:07 東亜日報
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=060000&biid=2005110224908
うーん。
どうも韓国側としては中国側の発表はインチキだと言いたいようですが、そんなことより私が気になったのは以下のくだりです。
東遠は中国にキムチ工場はあるが、すべて日本に輸出している。
おいおい、これって日本も人ごとじゃないってことですよね。
そもそも寄生虫の卵が何故キムチに付着するかというと、中国ではいまだ畑の肥料に人糞が使用されているからなのですが、メイドインコリアで中国産のキムチが日本に輸出されているとなると、こいつはマズイなあ。
しばらくキムチ食べるのやめようかなあ(汗
・・・
まあ、日本人の場合キムチなど食すのを我慢するぐらい別段困りはしませんが、お隣の韓国では大問題なのでしょうね。
キムチの問題は、ただでさえカッカしやすい韓国人をさらにアツクするんですよね。
私にもかつて強烈な「キムチ紛争」体験があるのです。
●キム君の自家製キムチの話
不肖・木走は週に1回工学系の学校で講師をさせていただいております。
もう5年前のことですが。その学校に韓国からの留学生キム(仮名)君がおりました。
・・・
キム君は当時25才でしたが、まあ日本人のお茶らけた学生達に比べたらとても勉強熱心であり、またさすが儒教の国の出身であり、講師の私に対しても極めて礼儀正しく、私の中のキム君に対する好感度はとてもよいものがありました。
ある日講義の後、キム君が講義内容で質問に来たのがきっかけで彼と親しく話すようになったのです。
よくよく彼の話を聞けばかなりの貧乏学生ぶりでバイト代で何とか生活を維持しているありさまだそうで、食費がもったいないから自炊しているとのことでしたが、私がビックリしたのは毎日の自炊のおかずは自家製キムチだけで貫いているとのことでした。
そう言われてみるとキム君と話しているとなんともその口臭がほのかにいつもキムチ臭いのです。(苦笑)
・・・
かわいそうに思った私はささやかに夕食をごちそうしようと提案し、キム君に「何でも好きなモノをごちそうするから食べたいものをいってみろ」と聞いたなら、彼の答えは「焼き肉を腹一杯食いたいです」(爆笑)
さっそく次の日曜日、焼き肉屋さんに彼を連れていき腹一杯肉を食べてもらいました。
で、その店でもびっくりしたのですが、彼は肉を焼きながらも、パクパクキムチを食べまくるのでした。
もうご飯食べてはキムチをパクリ、スープ飲んではキムチをパクリ、肉を食べてはキムチをパクリ、ってな調子でキムチを食べるついでに他のモノを食しているような有様でありました。
「先生、韓国人はキムチ無しでは一日も生きられないのですよ」
呆れてみている私にキム君は笑いながらそう話していましたが、これはまんざら冗談でもないかも知れないなと、彼のキムチの食べっぷりを見て私などは思ってしまいました。
・・・
そんなある日、キム君から電話がありました。
聞けば、今住んでいるアパートで隣人達とちょっとしたトラブルが発生して困っているので相談に乗って欲しいというのです。
他ならぬキム君の相談なので、私はすぐに時間を作りキム君のアパートに向かいました。
そのアパートは貧乏学生ばかり住んでいるボロアパートで、共同のトイレと共同の炊事室があるなんともレトロな造りなのには少し驚きましたが、まあキム君から前もって格安の家賃を聞いていましたので、こんなものかなとは想像していました。
で炊事室を覗いてみて私は驚きました。
く、くさい!
トラブルの原因は炊事室に置いてある、キム君の自家製キムチ用のポリバケツなのでした。(苦笑)
これはしかし、私もキムチは嫌いではありませんが、ポリバケツから発せられる強烈な臭いが炊事室中に充満していて、ただならぬ状態でありました。
同席した大家さんが申すには、他の部屋の住人達(聞けば全員留学生で、中国、韓国、マレーシア、フィリピンなどのアジア系学生さんだとか)からものすごいクレームが起こっているとのことでした。
いやこの臭いでは当然だと思いました。
ところが、いつもは礼儀正しいキム君がこのクレームには強固に反発しているのです。
「キムチは韓国食文化の中心です。これは文化に対する不当な干渉です」
もう必死に私に訴えてくるのです。
ひとのよさそうな初老の大家さんと私は顔を見合わせてしまいました。
・・・
すったもんだの揚げ句、結局はキム君はそのアパートを追い出されてしまい、私が保証人になり別のアパートに引っ越す羽目になりました。
今度は私も苦労して部屋探しを手伝い、2間の部屋を格安で借りれるよう手配できたので、キム君は部屋の中で自家製キムチを作れるようになり隣人とのトラブルも無くなったのでした。
・・・
しかし、今思い出してもあの強烈な臭いはすごかったなあ。
食の問題は根が深いです。
特にキムチに関わることは、我々日本人の想像以上に韓国人をアツクさせるようです。
・・・
キムチの話を書いてたら、なにやら猛烈に韓国料理が食べたくなってきました。
そうだ、今晩は家族で焼き肉を食べに行こうかな。(爆笑)
(木走まさみず)