木走日記

場末の時事評論

“多民族国家”日本はあり得るのか?〜日本の移民政策について考察してみる

 今日は日本の移民政策について真剣に考察してみたいと思います。



角界では実社会より一足早く外国人に門戸を解放

 今日の朝日新聞天声人語より・・・

 8年ほど前、ある運送会社で社員に髪を黒く染め直させようとしてもめたことがあった。髪を黄色く染めた若手を、上司が「取引先に印象が悪い」と説得した。社員は「好みの問題」と譲らず、3週間やり取りした末に解雇される。

 社員が訴え、争いは裁判の場に持ち込まれた。「染髪で社内秩序が乱されたというのは大げさ。解雇権の乱用だ」と会社側が敗れている(「労働判例」732号)。

 今日が千秋楽の大相撲秋場所でも、関取の髪を黒く染めさせるかどうかが話題になった。バルト海に面した東欧の小国エストニア出身の把瑠都(バルト)である。生まれつきの金髪だが、入門からわずか8場所で関取に昇進し、その鮮やかな髪に改めて角界の目が集まった。

 関取になれば大銀杏(おおいちょう)を結うのが決まりだが、これまで金髪の大銀杏など見たことがない。今場所をわかせた琴欧州は、 ブルガリアの生まれだが、髪は黒に近い。朝青龍らモンゴル勢や、曙らハワイ出身者にも金髪の関取はいなかった。

 「大銀杏は目立つからやはり黒く染めた方が」という声が一部で伝えられた。だが日本相撲協会では「自然な色のままでよい」という意見が優勢のようだ。「生まれつきの髪がいい」と本人にも染める考えはないらしい。

 番付にはロシア、チェコ、ブラジルと外国勢が並ぶ。多くは10代で来日し、日本語を覚え、伝統的な日本文化になじもうと努力してきた。昇進すると髪の色まで変えられるのではやはり気の毒だろう。そういえば、秋を彩るイチョウの大葉はもともと輝くような黄金色である。

天声人語】2005年09月25日(日曜日)付
http://www.asahi.com/paper/column.html

 角界では実社会より一足早く外国人に門戸を解放しています。現在幕内上位力士にずらりと外国籍力士が並んでいるのは既知のことでありますが、この角界のここ数年の外国人力士の対応は日本全体の移民政策および融和政策を考察するにあたり、リトルシミュレーションの場としてはうってつけです。

 秋場所番付現在、力士総数は735人で、外国出身力士は12か国59人。秋場所(11日初日)の新弟子検査受検を黒海の弟(入間川部屋)が受検し、九州場所(11月)で今年の7月の世界ジュニア選手権無差別3位となったグルジア人青年(木瀬部屋)が入門を目指しています。これで「1部屋1人」(全54部屋)の規定がある大相撲の外国人枠が事実上の満杯となりました。

 外国人枠(1部屋1人)の規定については、2002年2月に理事会の申し合わせで「総枠40人、1部屋2人」だった枠が、不平等だということで、当時既に複数所属する部屋を除き「1部屋1人」に定めたのです。

 現在54の相撲部屋のうち、外国人力士が所属していないのは伊勢ノ海、中村、峰崎、春日野の4部屋だけで、これらの部屋の師匠は、日本人力士の育成を優先させる方針で、外国人力士の入門には消極的な考え方だといいいます。

 また、この外国人枠満員御礼状態に対して、北の湖理事長は「今後も枠を広げる考えはない」と話しているそうです。

 積極的に外国人を招こうという考え方もあっていいし、日本人を育てたいという思いもあって当然でしょう。「国技」を標榜しているのだから、やはり日本人を育てたいという考え方に傾くのは当然だろうとも思います。

 興味深いのは出身国に関わらず、秩序維持するための人数大枠制限と、受け入れてからの融和政策、この場合は相撲界の古いしきたり(ルール)を厳しく遵守させることですが、まずは、おおむねうまくいっているわけです。

 この角界の話は、現在、国連教育科学文化機関(ユネスコ)で文化多様性条約案が議論されているのですが、そこでの争点にも通底する深い思想的背景が含まれていてとても興味深いのです。

 つまり、移民政策を論じる際のひとつの争点は、文化保護の重視か、文化の交流に重きを置くかであります。

 その点、角界では日本文化の保護と融和を重視しながら、外国籍力士の受け入れという文化の交流を実現している成功例と言えましょう。



●長期的移民政策が全くない日本政府と不可逆的変化で増加する在留外国人数

 日本においては中長期的戦略的移民政策は皆無です。以下のサイトの説明が適切に日本政府の今の立場を表明しています。

[移民政策]

 日本における移民政策は下記引用文に要約される。

「日本では法執行的な意味での出入国管理政策は存在するものの、社会政策的な意味での移民政策は存在しない。日本は外国から移民を受け入れないためであり、外国人を入国の段階で永住者として在留許可することはない。原則として永住権の付与は、外国人が一時的滞在者として一定期間滞在し、条件に適合する場合のみ限定的に行われる。」※

※外務省調査月報 No.1 2003年 「オーストラリアの移民政策と不法入国者問題」
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/pr/pub/geppo/pdfs/03_1_1.pdf



移民について考えるサイト  より抜粋
http://www.realiser.org/migrant/info-japan.htm

 つまり、日本政府としては「社会政策的な意味での移民政策は存在しない。日本は外国から移民を受け入れないためであり、外国人を入国の段階で永住者として在留許可することはない。」ことを原則としているわけです。

 しかしながら現状はどうでしょう。

[在留外国人データ]

 外国人登録者数※は,約168万人で、総人口比率のおよそ1.3%を占める(2000年末現在)。その内訳は、アジア地域出身者が7割以上を占め(韓国・朝鮮、ついで中国)、南米地域が2割弱を占める。過去10年間の伸び率を比較してみると、日本の総人口の伸び率2.8%に対して、外国人登録者の伸び率は58.1%と急激な増加率を認めるが、他の先進諸国と比較した際まだまだ定住者の絶対数は少ないと考えられる。※※

 外国人登録者のうち「永住者」は約39%(65万人)で、韓国・朝鮮、中国の順番となる。ただし、韓国・朝鮮、および中国の永住者のおよそ9割が「特別永住者」、いわゆる「在日」である。近年では永住者の割合は低下し、非永住者が増加しており、そのほとんどは単純労働者である。

外国人登録者とは永住者、非永住者の合計、また永住者は「一般永住者」と「特別永住者」からなる。
  http://www.immi-moj.go.jp/toukei/index.html
※※「週刊東洋経済」2001年6月16日号"日本への外国人移住に総合的な「移民政策」の確立を"
  http://www.kuis.ac.jp/icci/member/wada/ronko/010616_t.pdf

[不法残留者数]

22万4067人(2001/1/1 現在)

韓国(24.6%)、フィリピン(13.2%)、中国(12.3%)、タイ(7.6%)、マレーシア(4.5%)などから。

「本邦における不法在留者数について」
http://www.moj.go.jp/PRESS/010413-1/010413-1.html



移民について考えるサイト  より抜粋
http://www.realiser.org/migrant/info-japan.htm

 外国人登録者数約168万人で、総人口比率のおよそ1.3%を占める(2000年末現在)わけでありますが、重要なのはその伸び率でありまして、過去10年間の伸び率を比較してみると、日本の総人口の伸び率2.8%に対して、外国人登録者の伸び率は58.1%と急激な増加率を示しており、あわせて不法残留者数も急上昇しているわけです。

 つまり、戦略的移民政策を打ち立てようが立てまいが、現実には在留外国人は過去10年間で58.1%の伸びを示しており、かなり強引な外国人排斥政策(多文化並立主義が主流の最近の国際世論の動向を考慮すれば不可能に近いですが)を施行しない限りこの流れを止めることはできないわけです。

 また日本人自身の少子高齢化は加速を付けて政府予想を上回るスピードで進んでおり、今年度は遂に男性人口が初めて実数を減少させるという深刻な状況にまで追い込まれています。以上膨らみ続けるだろう外国人登録者数と減少続けるだろう日本人総人口数の二つの統計的事実からも、移民政策問題は早急に検討しなければならない現実的問題となることは自明だと思われます。

 移民を戦略的に受け入れるかどうかの善し悪しは大いに議論すべき内容ですが、日本政府が少なくとも長期的移民政策を全く用意できていないにもかかわらず外国人登録者が爆発的に増えている現状は、国策不在の非常に危険な状態だと言えましょう。



●ドイツの人口問題と移民政策についての興味深いレポート

 ヨーロッパ全体では2000万人とも言われるイスラム系移民については、先のロンドン地下鉄バス同時テロ事件でにわかに脚光を浴びていますが、中でもドイツは、総人口8200万人にたいして、ドイツに居住している外国人の数は730万人で総人口の8.9 %を占める外国人移民先進国であります。

 (財)国際貿易投資研究所の研究主幹である田中信世氏のレポート『ドイツの人口問題と移民政策』は、とても詳細にドイツの移民政策について分析されています。

ドイツの人口問題と移民政策
http://www.iti.or.jp/kiho46/46tanakan.pdf

 ドイツは古くから移民を政略的に受け入れている点や旧東ドイツ問題を抱えてきたなど日本とは前提が異なる点もありますが、急激な人口減少と少子高齢化問題においては現在の日本と共通の解決すべき問題を有しております。

急激な人口減少と少子高齢化問題

 ドイツが連邦と州の共同で実施した第9 回「2050 年までの人口予測調査」によれば、ドイツの人口は、このままで推移すれば、現在の8,200 万人から2050 年までに約5,900 万人に減少するというショッキングな予測結果が明らかになった。人口の大幅な減少は、労働市場に深刻な影響を及ぼし、さらには社会安全システムそのものに大きな影響を与えることになることから、ドイツでは移民政策の見直しが大きな議論を呼んでいる。
人口減少の原因は引き続き進行すると見られる少子化傾向であるが、老齢化の進行も人口の年齢構成上大きな問題を引き起こしている。
現在の人口を維持するためには、1 人の女性が平均して約2.1 人の子供を出産する必要があるが(再生産水準)、ドイツにおいては過去数十年にわたって、女性1 人当たりの平均的な出産数は1.3 人から1.5 人の間を上下しており、現在でもおおよそ1.4 人の水準にとどまっている。出生率の低下傾向と対照的に、平均余命は過去数十年間伸長を続けており、2000 年現在の平均余命は男74 歳、女80 歳である。平均余命は1970 年の時点と比べて約7 年伸びており、2050 年までにはさらに4 年伸びると予測されている。
その結果、現在の年齢別人口構成(約21 %が19 歳以下、56 %が20 〜 60 歳、23 %が61歳以上)が、2050 年には、人口の3 分の1 が60 歳以上となり、19 歳以下の若年層はわずか16 %にすぎなくなる。

 そして、大量の移民を受け入れない限り社会保障は維持できないと言う予測をしています。その数はなんと2050年までの間に1900万人です。

不可欠な移民の受け入れ

人口の年齢別構成を見る場合、生産年齢人口の大宗を占める20 〜 60 歳層に対する年金受給年齢層人口(61 歳以上)の比率(老齢率)が重要である。数年前はこの老齢率は36(生産年齢層100 人に対して年金年齢層が36 人)であったが、現在ではこの老齢率は40 となっている。2050 年の老齢率は、①なだらかな移民の流入が続く場合(年間10 万人の流入超過が続き、2000 年から2049 年までの期間に490 万人の移民のネット流入が発生すると仮定)、②大幅な移民の流入が続く場合(年間20 万人の流入超過が続き、同期間に930 万人の移民のネット流入が生じると仮定)、③移民の純流入がない場合(移民の流入超過がなく、ドイツの人口は5,900 万人に減少すると仮定)の3 つの異なるケースについて計算されている。老齢率は、①の場合80、②の場合75、さらに③の場合は84 になると予測されている。ちなみに、国連が実施した「人口維持のための移民受け入れ」のモデル計算によれば、ドイツの場合、64 歳以上人口の15 〜 64 歳の年齢層に対する比率を現状で維持するためには、年間約340 万人の移民の受け入れが必要という結果が出ている。このことは、95 年から2050 年までの間にドイツは、現在の2 倍に相当する約1,900 万人の移民を受け入れなければならないということを意味する。このことは、現実的な枠組みのもとでは適正な年齢構成を維持することが困難であることを示している。老齢人口/生産人口比率をコンスタントに保とうとすると、老齢の定義を77 歳以上に引き上げなくてはならなくなる。より高い移民の流入(前述の②)を想定し、生涯の労働期間を65 歳まで引き伸ばしたとしても、老齢率は今日の40 から2050 年には52 まで上昇するのである。

 ドイツは日本以上の高失業率にあえいでいる中で敢えて大量の移民受け入れ政策の舵を取ろうとしている点も重要なポイントであります。

総合的な移民政策と社会融和政策を提案

以上のようなドイツの人口問題の現状を踏まえ、ドイツの移民政策のあり方を検討してきた政府の諮問委員会は2001 年7 月、その結果をとりまとめた報告書を発表した。報告書は、人口減に伴う将来の労働力の不足に対処するためには、移民政策と社会融和政策を組み合わせた総合的で戦略的な政策に基づいた移民の受け入れが必要と提案している。
同報告書で具体的に提案されているのは以下のような点である。
【国内労働力の活用】
将来の労働力不足を解消するために現在約390 万人いる失業者を優先的に活用する。そのために失業者に対する研修システムを改善する。国外からの移民の受け入れは、失業者の削減を妨げない範囲で計画的に行う。
【移民の受け入れ】
移民の受け入れは、① 5 年以内の短期滞在移民、②長期滞在移民、③経済や研究部門のトップクラスの従業員、④自営業者、などに分けて対応する。移民の受け入れ数は新たに創設される評議会において毎年決定されるが、1 年目における短期移民と長期移民の割り当て数は各2万人プラスその家族とし、経済・研究部門のトップクラスの従業員、自営業者、学生の流入には制限を設けない。
【移民のドイツ社会への融和】
移民のドイツ社会へのスムーズな融和はきわめて重要であり、その実現のために、①新規移民に対する当初研修を実施し、②移民やその家族に対する教育を充実する。
①の「当初研修」は成人の新規移民が教育機関労働市場にアプローチすることを容易にするためのもので、個人別に締結された「融和契約」に基づき最低600 時間の研修を行う。この研修のためには、22 万カ所の研修所が必要であり、そのための費用として最低で6億1,500万マルク(国と州が半分ずつ負担)が必要である。
②の「教育の充実」では、a)移民の子供に対する幼稚園教育の充実、b)移民の配偶者等を対象としたドイツ語コースの設置、c)移民の若者が学業を途中放棄することを防ぐために学校の通常のカリキュラムに第2 語学としてのドイツ語の取り入れ、d)イスラム教徒の移民のアイデンティティーを守るために学校の授業にドイツ語によるイスラム教の授業の取り入れ、などが重要である。
【受け入れ手続きの簡素化と官庁組織の改変】
労働移民の受け入れ手続きを簡素化する。すなわち、滞在許可と労働許可は1 回の決定で賦与されるようにし、申請者は将来、役所の窓口1つに行くだけで済むようにする(「ワンストップ・ガバメント」)。また、1 つの役所が移民受け入れ手続きから決定までのすべてを実施するために官庁組織を改変する(「主務官庁」)。
具体的には、長期移民の受け入れは、難民認定庁から分離して新設する連邦移民融和庁(BZI)が行い、このBZI に連邦上級官庁として移民受け入れと社会的な融和政策を総合的に実施する機能を持たせる。一方、短期移民の場合は、労働需給の現状把握と移民の持つ職業資格の評価が受け入れ許可を出す際の重要な判断基準になる。このため、短期移民の受け入れ手続きと決定は連邦雇用庁が主務官庁として実施する。
【移民関連法の整備】
前述のような各種の施策を実施するためには、外国人法をはじめとする既存の法律では十分に対応できないため、移民の受け入れと社会融和のための新しい連邦法をつくる。
また、移民に対する国籍の付与は、社会に受け入れられているというシグナルを移民に与えるという点で重要であるが、現行法では出身国の国籍を放棄しなければならないことがドイツ国籍を取得するネックになっている。このため、出身国の国籍を保持したままでドイツ国籍の取得を可能にする新しい国籍法を導入する。

 実際には国内失業者問題をクリアしつつ移民受け入れを実現しなければならないわけで、国外からの移民の受け入れは、失業者の削減を妨げない範囲で計画的に行うという難しい問題を抱えているわけです。

 しかし、日本と共通の人口減少や失業者の深刻な問題を抱えているドイツが、長期的予測のもとに国を挙げて戦略的移民政策を計画していることは、日本の移民政策を考える上でいろいろな点で参考になることでしょう。

 ドイツではなく友好国アメリカからも意外なひとが日本の移民政策を強く求めています。



●「日本は移民問題に真正面から取り組むべきだ」と進言〜アーミテージ前国務副長官

 今年6月にアーミテージ前国務副長官が日経インタビューで「日本は移民問題に真正面から取り組むべきだ」と進言しています。

 以下のサイトでは興味深いコメントでまとめてありますので、抜粋してご紹介いたしましょう。

21世紀も米国がアジアでパートナーと呼べるのは日本以外にない、と主張するリチャード・アーミテージ前国務副長官は、日本に戦略的移民を積極的に進めます。「高齢化、少子化の問題は、米国でも例外ではありません。しかし我々には移民国家として長年やってきた経験とノウハウがあります。米国全体が労働力不足の問題で悩むことはないと自負しています」移民制度を導入するのは移民側と受け入れる側はきちんと問題に向き合い、真剣に環境整備に取り組む必要があるのは言うまでもありません。「移民する人々は日本の文化、社会を理解し、日本も法的な問題を含め、きちんと対応しなくてはならない」アーミテージ前国務副長官自身も6人のアフリカ系米国人などを養子縁組し、米国市民に育てた実績の持ち主。「移民は単に基礎的な労働力を確保するだけではありません。税収の確保、さらには年金制度の維持といった財政問題にもつながります。日本がまず最優先に考えなくてはならないのが、これまで伝統的に重視してこなかった女性の労働力を最大限に活用すること。短期的には女性の活力を生かし、長期的には移民問題に真正面から取り組む。この組み合わせ以外に日本が直面する難問を解決する手立てはないのではないでしょうか」要するにアーミテージ前国務副長官は「日本よ。アメリカになれ」と主張しているわけです。その主張は100%受け入れられないでしょうが、アメリカのいいところをちゃっかり導入する精神は必要でしょう。親日家のアーミテージさんは、日本に移民して「阿阿実亭慈」に改名して、移民の素晴らしさを自ら実行してほしいものです。

アーミテージ親日家じゃ より抜粋
http://www.asahi-net.or.jp/~AN4S-OKD/private/c2005/c0627.htm

 アーミテージ自身も「6人のアフリカ系米国人などを養子縁組し、米国市民に育てた実績の持ち主。」だそうですが、

「高齢化、少子化の問題は、米国でも例外ではありません。しかし我々には移民国家として長年やってきた経験とノウハウがあります。米国全体が労働力不足の問題で悩むことはないと自負しています」

「移民する人々は日本の文化、社会を理解し、日本も法的な問題を含め、きちんと対応しなくてはならない」

「移民は単に基礎的な労働力を確保するだけではありません。税収の確保、さらには年金制度の維持といった財政問題にもつながります。日本がまず最優先に考えなくてはならないのが、これまで伝統的に重視してこなかった女性の労働力を最大限に活用すること。短期的には女性の活力を生かし、長期的には移民問題に真正面から取り組む。この組み合わせ以外に日本が直面する難問を解決する手立てはないのではないでしょうか」

 ・・・

 全てアメリカ方式などとは不可能でしょうが、とても考えさせられる意見であります。



●“多民族国家”日本の思考実験をしていこう

 移民の計画的受け入れという移民政策の大転換も含めた、すくなくてもあらゆる可能性を予測分析する思考実験をすぐに着手すべきであります。

 ドイツで計画されている移民政策は、一言で要約すれば、短期移民・長期移民を問わず、受け入れる移民は有資格者を中心とした質の高い移民とし、受け入れた移民は融和政策でドイツ社会への融和を図り、最終的に国籍賦与まで持っていくということであります。

 移民政策と融和政策については、この両面がそろってはじめて“多民族国家”としての将来展望が開けてくるのであります。

 日本においても移民政策および融和政策についての具体的試案を作成議論すべきであります。

 いずれにしても、人口の大幅な減少を前提とする限り、今後日本は移民の計画的な受け入れに踏み切らざるを得ないことは明白であり、その際、ドイツの諮問委員会の報告書が打ち出した各種施策の日本版が実行に移されていくことになると見られます。

 日本が移民の受け入れを増やすことになれば、移民の日本社会への融和が重要な問題になるのも当然であります。きめ細かい社会融和政策を実施すれば、かなりの成果も期待できましょう。

 しかし、肝心の日本人側にこのような政策を受け入れる心の準備はできているのでしょうか?

 日本人の移民に対する心の融和の問題も重要な問題であるように思われます。

 日本では中国・韓国との近隣諸国との関係も冷え切っており、またイギリス地下鉄テロ事件でも問題視されている移民受け入れによる治安悪化の側面も無視できない問題ではありましょう。

 だからといって視野狭く外国人排斥の短絡思考で、この問題を思考停止して良いはずはありません。

最初にも述べたとおり、移民を戦略的に受け入れるかどうかの善し悪しは大いに議論すべき内容ですが、日本政府が少なくとも長期的移民政策を全く用意できていないにもかかわらず外国人登録者が爆発的に増えている現状は、国策不在の非常に危険な状態だと言えましょう。


 当ブログでは、少なくともこの問題をタブー視せずに積極的に議論していきたいと思います。


 読者のみなさまの、日本の移民政策に関する多様な積極的なご意見を歓迎いたします。



(木走まさみず)