木走日記

場末の時事評論

”朝日叩き”を始めた読売の「本気」といつまでも”朝日叩き”ができない田原氏の「限界」

 今日の読売新聞の紙面(東京版)一面を見て、驚きました。

 【[検証 朝日「慰安婦」報道](1)虚構の「強制連行」拡散】と題して朝日新聞従軍慰安婦捏造報道問題の連載記事が1面で始まったからであります。

 記事の字数も1面の左3分の一と4面の半分ほどを割いており圧巻です。

 記事の冒頭の書き出しが読売の本気度がうかがわれて期待させます。

 朝日新聞がいわゆる従軍慰安婦を巡り、「強制連行」の証言を紹介した記事を32年後になって取り消した。だが、一連の報道は「日本軍に組織的に強制連行された慰安婦」というねじ曲げられた歴史の固定化に深く関与した。慰安婦の虚構は今なお世界に拡散し続け、修正される見通しもない。戦後、例がないほど日本に負の遺産をもたらした朝日「慰安婦」報道を検証する。

 慰安婦の虚構は今なお世界に拡散し続け、修正される見通しもない。戦後、例がないほど日本に負の遺産をもたらした朝日「慰安婦」報道」とは、明らかに読売は朝日批判のトーンを一気に上げてきました、これまでより一歩踏み越えた表現になっています、ネットでしつこく朝日新聞捏造報道批判をしてきた当ブログとしては、少し溜飲が下がる思いです。

 ネット上でも当記事は確認できますのでご紹介。

[検証 朝日「慰安婦」報道](1)虚構の「強制連行」拡散
2014年08月28日 09時00分
http://www.yomiuri.co.jp/feature/ianfu/20140828-OYT8T50022.html

 関心のある読者は是非直接リンク先でお読みください。

 意欲ある読売の報道姿勢に敬意を表して今回は引用は控えます。

 日本のマスメディアにおいて、他社の過去報道をこのように大々的に批判的に特集連載することは異例と言えましょう、メディアヲッチャーとして長らくマスメディアの報道を見守ってきた当ブログですが、読売新聞が一面を割いて他社批判の特集連載報道をするなどとはいい意味で予想外、想定の範囲外でありました。

 言論には言論を持って糾弾する、大変すばらしい連載記事であると思います。

 「日本政府は、戦時中の日本軍による『性奴隷制(sexual slavery)』の実行犯を訴追し、有罪であれば処罰を行うべきだ」

 読売の上記特集記事でも触れているのですが、7月23日、スイス・ジュネーブ。国連で人権問題を扱う自由権規約委員会慰安婦制度について、こんな勧告が採択されました。

 勧告には法的拘束力はありませんが、日本政府による〈1〉元慰安婦への賠償〈2〉証拠の開示――なども列挙されています。

 採択に先立ち、7月15日と16日に行われた協議で、日本の山中修外務省人権人道課長が、「『性奴隷』と呼ぶのは適当ではない」と2度反論しましたが、まったく受け入れられなかったわけです。

 このニュースは早速韓国系メディアで速報されています。

国連自由権規約委員会、日本政府に厳しい勧告
ヘイトスピーチに法規制要求/「慰安婦」問題 加害者の刑事責任追及求める
http://chosonsinbo.com/jp/2014/07/0730rn-2/

 国連だけではありませんが、「慰安婦」問題に関しては日本の外交的敗北が続いています。

 このような国益をそこねる事態を招いているのは、主に国内の一部メディアや団体、そして韓国や中国の政府や市民団体が広めている「国が慰安婦にするため、朝鮮人女性などを強制連行した」との国際的大誤解に基づくものです、そしてその大誤解は、朝日新聞捏造報道が発端であることにたどり着きます。

 今回朝日新聞は過去の捏造報道の一部を認めましたが、全てを認めたわけではありません。

 それどころか、一面にて「私たちはこれからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます」と開き直っているのです。

2014-08-05 ■[メディア]嘘の上塗りと自己弁護に終始する朝日新聞従軍慰安婦特集記事〜「私たちはこれからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます」(朝日記事)だと?
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140805

 朝日新聞の一連の従軍慰安婦に対する捏造報道は、もはや日本国家に対する取り返しのつかない「犯罪行為」と表現しても過言ではないでしょう。

 これを機に朝日新聞が未だ認めてない従軍慰安婦捏造報道箇所も含めて徹底的に事実の検証を行うべきです。

 朝日新聞捏造報道は徹底的に糾弾されるべきであり、その意味でも読売の今回の慰安婦報道に関する”朝日叩き”特集連載開始は、歓迎したいと思うのです。

 ・・・

 未だに朝日新聞を擁護するジャーナリストもこの国には存在するというのは驚きです。

 BLOGOSの記事から。

田原総一朗2014年08月27日 13:54「朝日叩き」が安易な「ナショナリズム」につながるのは気持ち悪い〜田原総一朗インタビュー
http://blogos.com/article/93224/

 田原氏は「「韓国叩き」「中国叩き」と「朝日叩き」が非常に似ているのが、気持ち悪い」と指摘します。

いま日本では、韓国の悪口や中国の悪口を言えば、週刊誌や月刊誌が売れる。だから、週刊誌や月刊誌は、とにかく韓国や中国を批判する。その手の単行本もやたらと出ている。この「韓国叩き」「中国叩き」と「朝日叩き」が非常に似ているのが、気持ち悪いなと感じている。

 このインタビュー記事は「「朝日叩き」をするのはいいが、それが安易なナショナリズムにつながっていくのは、戦争を知っている世代として、危険」だとの発言で結ばれています。

そういう中国や韓国の国内事情も全く考えないナショナリズムの勃興というのは、嫌だなと感じる。「朝日叩き」をするのはいいが、それが安易なナショナリズムにつながっていくのは、戦争を知っている世代として、危険なことだと思う。

 ・・・

 ここが彼のジャーナリストとしての限界です。

 当ブログで一年前指摘した通りです。

 当時のエントリーより当該箇所を抜粋。

(前略)

 例えばです。

 従軍慰安婦問題は朝日新聞の取り上げた吉田清治氏の捏造報道により国際化したことはネットではよく知られていることですが、前回のTV朝日の「TVタックル」では、漫画家の小林よしのり氏は「朝日新聞」ではなく「いろんなメディア」とごまかして発言しています。

 また、朝まで生TVなどでMCをつとめる田原総一朗氏も、ある出演者が「朝日新聞による慰安婦捏造記事が発端」と指摘したことに対して議論を打ち切っています。

 考えてみれば自明ですが、朝日の批判しない人がTV朝日に出演するのは当然です。

 評論家が出演料や原稿料を稼いでいるお得意先であるマスメディアを批判しないのはある意味当然です。

 出入り禁止なれば飯の食い上げだからです。

 従軍慰安婦問題でTV朝日に出演している田原総一朗氏は朝日新聞捏造報道の追求はできません。

 朝日新聞捏造報道の真偽の検証すらできません。

 そこが彼の限界です。

(後略)

2013-06-04■田原総一朗氏とファフィントン・ポストの限界性について〜『木走日記』が朝日新聞批判を止めない理由
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20130604

 当ブログから言わせて頂ければ遅まきながらではあるのですが、過去の従軍慰安婦捏造報道に関して”朝日叩き”に本気で一歩踏み込んだ読売であります。

 対して「戦争を知っている世代として気持ち悪い」として、朝日新聞捏造報道の真偽の検証すら手を出さない田原総一朗氏なのであります。

 これが彼の限界です。



(木走まさみず)