木走日記

場末の時事評論

政治家やマスメディアが絶対触れない深刻でダークなパチンコ業界問題

 26日付け朝日新聞記事から。

カジノ法案、民主まとまらず 「ギャンブル依存増える」

 カジノを日本でも合法化する法案をめぐり、民主、自民両党がそれぞれ24日、党内で関係会議を開いた。自民党は早々に了承したのに対し、民主党は「ギャンブル依存が増える」との反論が出ており、まとまっていない。超党派で今国会での提出をめざすが、見通しは立っていない。

 法案は、国が自治体の申請に基づきカジノを認める区域を指定することなどを定めている。昨年8月に、民主、自民、公明など超党派の議連で取りまとめた。

 民主党が24日に開いた内閣、法務、国土交通各部門会議の合同会議では、弁護士ら専門家からの意見を聞いたが、法案への賛否が割れた。経済成長を重視する内閣部門の所属議員はすでに「カジノ周辺にはホテルや商業施設もでき、雇用や消費のアップも期待できる」と賛成を表明。これに対し、法務部門の議員は「ギャンブルが助長され、善良な風俗が破壊されかねない」と指摘している。刑法に定められた賭博罪に「例外」をつくることへの抵抗感もある。

 一方、自民党は24日にあった内閣、国交両部会の合同会議で、とくに異論もなく法案を了承した。
http://www.asahi.com/politics/update/0524/TKY201205240500.html

 うむ、カジノを日本でも合法化する法案をめぐり、民主党の法務部門の議員は「ギャンブルが助長され、善良な風俗が破壊されかねない」と指摘しているそうです。また刑法に定められた賭博罪に「例外」をつくることへの抵抗感もあるそうです。

 「ギャンブル依存が増える」、「善良な風俗が破壊される」、「賭博罪に例外をつくることになる」ですか。

 国会議員のカジノ法案に対するこうした偽善じみた発言を聞いていると呆れるだけでなく怒りすら感じます。

 現実にこの国のギャンブル依存をふやし続け、善良な風俗を破壊し続け、賭博罪の見事な例外扱いとなっている、深刻なパチンコ業界の問題をいっさい触れずに、「自治体の申請に基づきカジノを認める区域を指定する」カジノ法案に反対するなど笑止千万であります。
 全国1万2千のパチンコホールは、「自治体の申請に基づきカジノを認める区域を指定する」などの上品な区分けなどなく、日本列島の市街地に、駅前から郊外の幹線道路沿いに至るまで北海道から沖縄まで人々の生活圏に隣接しているのであり、この脱法的なギャンブル場は今も全国でたくさんのギャンブル依存者を生み出し、多くの生活破綻者を生んでいます。
 多くの先進国でもカジノや競馬などギャンブルは当然認められていますが、日本のパチンコホールのように賭博場が住民の生活圏の中に拡散して展開している国など、日本以外にありません。

 上記記事でもカジノを認めれば「賭博罪に例外をつくることになる」という議論にあるように、そもそもこの国の法律は、宝くじや競輪・競馬など公営ギャンブル以外で民間が賭博場を運営することを認めてはいません。

 しかるにパチンコホールで用意されている景品には、一般景品以外に特殊景品というものがあり、出球で特殊景品と交換すれば、パチンコ屋に隣接している特殊景品換金場に持っていけば換金できるのです。

 これを「三店方式」といいますが、風営法は営業者に、現金や有価証券を賞品として提供することや客に提供した賞品を買い取ることを禁じていますが、パチンコ業界の言い分はパチンコホールは法律を遵守し賞品を買い取ることはいっさいしていない、パチンコホール特殊景品換金場にはいっさい関知していない、という子供だましのような論法です。

 このようなダークな業界をなぜ警察は取り締まらないのか、それはパチンコ業界そのものが巨大なる警察利権となっているからです。

 パチンコメーカーにもパチンコホール大手にもたくさんの警察OBが天下っております。

 警察庁はパチンコ業界の監督官庁として、その外郭団体である保安通信協会で遊技機の仕様が適正であるかどうかを調べる試験を行ったり、さらに、試験に通過した機種を実際に営業に供して良いかどうかの検定を各都道府県の公安委員会で行ったり、あるいは店舗営業の許可を与えたりするなど、業界の生殺与奪の権を握る立場にあるため、癒着が発生しやすい関係にあります。

 例えば、遊技機の型式試験を行う保安電子通信技術協会の前会長は前警察庁長官であった山本鎮彦であり、職員の1/3を警察出身者が占めることや、パチンコメーカー・アルゼでは前警視総監である前田健治を常勤顧問として迎え入れています。

 また、パチンコ業者の団体である東京商業流通協同組合、東京ユニオンサーキュレーションなどに、多くの警察官が天下りしています。

 日本全国でパチンコの違法状態が放置されている理由は、他でもない警察が換金業務を牛耳っているからである、といっても過言ではないでしょう。
 警察利権により保護されてきたパチンコ業界の実態を数字で抑えておきましょう。

 全日遊連や日本遊戯関連事業協会が公表している資料から数字を押さえましょう。

全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)
各種統計一覧
遊技場店舗数、機械台数一覧表
平成22年12月31日現在
http://www.zennichiyuren.or.jp/material/report.html/tenpoindex/409

社団法人日本遊戯関連事業協会
売上・参加人口・活動回数
http://www.nichiyukyo.or.jp/condition/index.php

 平成22年12月現在の業界の規模は以下の通り。

■表1:パチンコ業界規模

 年間売上高19兆3800億とは、23兆9000億の外食産業に匹敵する巨大市場であり、GDPの4%に当たる規模であります。

 もっとも外食産業は442万人の雇用を生み出していますが、賭博場であるパチンコホールは雇用創出は32万にとどまり1670万のギャンブラーを生み出しています。

 ここ数年、パチンコ業界の売上は不況の影響もあり下がってきていますが、レンジを20年、40年と長く取れば、パチンコ業界の売上は「異常に膨張」してきたといってもいいでしょう。

 この20兆円市場であるパチンコ業界が、日本のギャンブル市場で警察利権などによりいかに保護され「異常な成長」を遂げてきたのか、数値で検証しましょう。

 1975年から2010年に掛けて日本におけるギャンブル市場は5兆3670億円から24兆8408億円と4.63倍に成長してきました。

■表2:日本におけるギャンブル市場の推移(1975年、2010年対比)(単位:億円)

ギャンブル 1975 2010 伸び高
パチンコ 13040 193800 180760
宝くじ 350 9200 8850
サッカーくじ 0 968 968
中央競馬 9080 24280 15200
競艇 11750 8970 -2780
競輪 10940 6790 -4150
地方競馬 6860 3480 -3380
オートレース 1650 920 -730
合計 53670 248408 194738

 伸び高19兆4738億のうち、実にパチンコ市場で18兆760億を占めています。

■図1:日本におけるギャンブル市場の推移(1975年、2010年対比)(単位:億円)

 結果、1975年には24.3%だったパチンコのシェアは2012年には78.0%にまで膨張しています。

■図2:ギャンブル市場で膨張するパチンコ業界の推移(1975年、2010年対比)

 75年には日本のギャンブルの売上の四分の一弱だったパチンコ業界ですが、ギャンブル市場が4.63倍と膨張するこの35年間に、そのシェアは8割にも及んでいます、現在ではギャンブルといえばパチンコホールを指すと言ってもウソではない独占状態になっているのです。

 このパチンコ業界の問題は、パチンコホールオーナーの9割近くが在日韓国・朝鮮人であることからより複雑な問題を内包しています(『AERA』(2006年2月13日号)では「全国のパチンコ店オーナーの出自の内訳は、韓国籍が50%、朝鮮籍が30〜40%、日本国籍、華僑が各5%」としています)。

 ホール業界トップのマルハンの会長である韓国系日本人である韓昌祐は「パチンコ経営をしている北朝鮮に忠誠を誓う在日韓国・朝鮮人は、その収益を北朝鮮へ送金していることは確実である」と述べています。

 そもそもが法律上極めてダークな存在であるパチンコ業界が、警察利権もあり問題視せずに膨張してきた背景には、日本のマスメディアのチキン(臆病)な沈黙にあります。
 日本のマスメディアではパチンコ業界の問題は完全にタブー視されています。
 例えば上述したこの国のギャンブル市場においてパチンコ業界だけが突出して膨張してきた事実を、マスメディアは決して報道しません。
 そもそもパチンコ業界はマスコミの一大スポンサーであり扱いづらい上に、在日韓国・朝鮮人団体からの圧力もあり、火中の栗を拾うマスメディアはないのです。
 メディアだけでなく政界でも警察利権もありある種のタブー扱いになっています。
 このような深刻な問題を放置したまま、国会にてカジノ法案を審議しているその間抜けな図式はいかがでしょう。

 パチンコ業界こそ「ギャンブル依存を増加させている」のではないですか。
 「善良な風俗を破壊している」のではないですか。
 「賭博罪に例外をつくっていること」に現実としてなってないですか。
 読者のみなさん、この問題、どう思われますか?



(木走まさみず)