木走日記

場末の時事評論

緻密に計画された極めて長期に渡る中国の海洋戦略を検証〜戦争反対ならばまず中国大使館の前でデモすべきだ

 さてスプラトリー(南沙)諸島であります。

 満潮時に海没してしまう岩礁に人工島を作り3000メートル級の滑走路など軍事拠点化を進め、国際法を無視して強引に領土領海の拡張を推し進めている中国なのであります。

 南シナ海の領有権問題に関しての中国の主張の根拠は、1953年から中華人民共和国がその全域にわたる権利を主張するために地図上に引いている破線・九段線(きゅうだんせん、英語: Nine-dotted Line)であります。

 ウィキペディアよりパブリックドメインの九段線の地図をご紹介。

■図1:中華人民共和国が主張している“九段線”(緑色

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%9D%E6%AE%B5%E7%B7%9A

 地図の緑色の破線が中国が一方的に主張している”九段線”なのでありますが、ご覧のとおり、南沙諸島西沙諸島を含め、ほぼ南シナ海全域を中国の主権が及ぶ領海と主張しているのです。

 中国大陸から遥か離れたスプラトリー(南沙)諸島を自国領と主張するこの”九段線”は、誰が見ても地政学的には無理のある主張なのですが、その形状から南シナ海に伸びる中国の赤い舌」とも呼ばれています。

 この南シナ海における”九段線”は、実は中華人民共和国の軍事戦略上の概念のことであり戦力展開の目標ラインであり対米防衛線である”第一列島線”の構成の一部となっております。

 「南シナ海に伸びる中国の赤い舌」とも揶揄されるその舌先に位置する中国大陸から遥か離れたスプラトリー(南沙)諸島になぜ中国は国際的批判も顧みず軍事基地化を急いでいるのか、そもそも中国が死守しようと躍起になっている対米防衛線である”第一列島線”とはなぜ生まれたのか、中国視点で考察しておきます。

 ※以下の図はすべて、過去エントリーで当ブログが作図したのを本エントリー用にリメイクしたものです。

 中国がなぜ国際的摩擦を顧みずに「海洋強国」建設にこだわるのか、あくまでも中国側の視点に立って考察してみたいです。

 まず、中国側の視点に立つために、中国起点で90度回転して東アジア地図を俯瞰して見ましょう。

■図2:中国起点で90度回転して俯瞰する東アジア地図

※当ブログ作図

 実は中国は「海洋強国」とは名ばかり、大洋に進出するためには、北は、朝鮮半島、日本列島に阻まれ、中央には琉球諸島、台湾、フィリピン諸島に阻まれ、南にはマレーシアやインドネシア諸島、インドシナ半島に囲まれていることが、この図で見るとよく理解できます。

 中国はその広大な国土とは裏腹に、海岸線は、東シナ海(East China Sea)南シナ海(South China Sea)に面しているだけであり、その排他的経済水域(EEZ)は約88万km2と日本の約1/5に過ぎません。

 中国から見れば、中国の海は、北朝鮮、韓国、日本、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム等に包囲されており、東シナ海(East China Sea)と南シナ海(South China Sea)の制海権を失えば簡単に海上封鎖されてしまう、地政学的に脆弱な条件のもとにあるわけです。

 つまり中国は東シナ海南シナ海のわずか2つの外洋への入口しか有していないわけです。

■図3:東シナ海南シナ海のわずか2つの外洋への入口

※当ブログ作図

 中国が外洋に進出するためには、東シナ海南シナ海制海権確保が死活的に重要なのです。

 そこで、1982年12月10日国連海洋法条約が採択されたのを機に、中国海軍では管轄海域を領土的なものと観念し、これを他国から防衛すべきであるとの思考を強めます。

 1982年に海軍司令員に就任した劉華清は、国連海洋法条約に基づき、中国は300万平方キロメートルあまりの管轄海域を設定できると主張し、これらの海域と大陸棚を中国の「海洋国土」と表現します。

 さらに劉は、黄海東シナ海南シナ海は「中国が生存と発展を依拠する資源の宝庫と安全保障上の障壁」であるが、「歴史的原因により、海洋資源開発、EEZ の境界画定、大陸棚、一部の島嶼、特に南シナ海では周辺諸国との間で争いと立場の違いがある」と指摘します。この状況下で海洋国土を侵犯されないためには、海軍は「戦略軍種」として海軍戦略を持つべきであると論じたのであります。

 これにより東シナ海南シナ海は中国に取り、「中国が生存と発展を依拠する資源の宝庫と安全保障上の障壁」となり、第一列島線”(First Island Chain)と呼ばれる対米防衛線が確立されます。

 第一列島線内の海は中国軍にとって「自国領海」に準ずる「守るべき海」とされたわけです。

■図4:東シナ海南シナ海を安全保障上の障壁とする第一列島線

※当ブログ作図

 ご覧のとおり、ここに南シナ海の”九段線”は”第一列島線”に組み込まれます。

 国連海洋法条約を受けて、中国は海洋に関する国内法整備にも注力いたします。

 1992年2月25日、「中華人民共和国領海および接続水域法」(以下、「領海法」)が施行され、他国と領有権争いのある島嶼を中国の領土と明記して注目されます。

 台湾、南シナ海パラセル諸島スプラトリー諸島などとともに尖閣諸島を中国の領土と規定し、1971年以来の尖閣諸島に対する領有権の主張を国内法で規定いたします。
 これらの領有権の主張を前提に、この法律は、中国が権利を持つと主張する接続水域において、中国の法律に違反する外国船舶に対し、他国の領海に入るまで追尾する継続追跡権を軍艦、軍用機、政府の授権を受けた船舶および航空機に与えています。
 ここにいたり、国際法上公海であるはずの東シナ海南シナ海および海域諸島が、中国にとって「中国が生存と発展を依拠する資源の宝庫と安全保障上の障壁」である「内海」的存在であることが、軍事的戦略としてだけでなく、国内法上においてもその整備が完成いたします。

ここで、西沙(パラセル)諸島におけるベトナムなどへの覇権、南沙(スプラトリー)諸島におけるフィリピンなどへの覇権、および尖閣諸島における日本などへの覇権、これらはすべて「海王強国」を目指す中国にとって、「海洋国土を守る聖なる防衛戦」となったわけです。

■図5:東シナ海南シナ海における主な領土紛争

※当ブログ作図

 「海王強国」を目指す中国は、この25年で10.46倍と驚異的なペースで軍事費を拡大し、その大半をそれまで脆弱であった海軍の近代化に当てています、下記グラフで確認できますが、同時期日本の軍事費がほぼ横一線であることと対比すれば、今東アジアの海軍軍事力のパワーバランスが大きく中国寄りに変動していることは明白です。

 このグラフが、日本はいまこそアメリカや同盟国との集団的自衛権について建設的かつ積極的に議論すべきである、冷徹な国際状況のすべてを物語っているわけです。

■図6:日本と中国の軍事費推移(1989−2014)

 ・・・

 中国は、いま検証してきたように、「国家百年の計」とも申せましょう、緻密に計画された極めて長期に渡る海洋戦略を実行してまいりました。

 その戦略はあくまで中国が主体的に構築し実践しているものであり、中国にとって一周辺国である日本の政権が媚中派であろうと嫌中派であろうと、その日本政府の政策によって大きく方針が変換されるような受動的なものでは決してありません、ここが極めて重要です。

 日本の一部リベラル派は、日中首脳会談実現を機に、中国を仮想敵国とみなした安保法案はプロパガンダに過ぎなかったと批判しています。

猪野 亨
2015年11月02日 09:34
日中首脳会談はじまる 関係改善へ 仮想敵国中国はどこへ行ったのでしょう
http://blogos.com/article/142329/

 失礼して当該部分を抜粋、ご紹介。

 国会で戦争法案の審議中、特に参議院での審議では、安倍政権は露骨に中国を名指し批判し、仮想敵国扱いをして戦争法案(集団的自衛権行使を容認する具体化法案)を正当化してきました。

安倍氏 中国を名指し 軍拡の正当化を強調するために戦争法案の対象を拡大! もっともっと拡がりますよ」

 このデタラメの説明が何だったのかということです。これでおわかりですよね。

 この中国の「海洋強国」建設やそれにともなう軍備拡張、第一列島線内における隠さない領土的野心を無視するのは、なにもこの論説だけではありません。

 ここにSEALDsのホームページがあります。

SEALDs
私たちは、自由と民主主義に基づく政治を求めます。 
http://www.sealds.com/

 このホームページに彼らが掲げる外交・安全保障政策が"NATIONAL SECURITY"と題して掲載されています。

 そこには対中国政策がこう記述されています。

  現政権は2年以内の憲法改正を掲げるとともに、集団的自衛権の行使容認、武器輸出政策の緩和、日米新ガイドライン改定など、これまでの安全保障政策の大幅な転換を進めています。しかし、たとえば中国は政治体制こそ日本と大きく異なるものの、重要な経済的パートナーであり、いたずらに緊張関係を煽るべきではありません。さらに靖国参拝については、東アジアからの懸念はもちろん、アメリ国務省も「失望した」とコメントするなど、外交関係を悪化させています。こうした外交・安全保障政策は、国際連合を中心とした戦争違法化の流れに逆行するものであり、日本に対する国際社会からの信頼を失うきっかけになりかねません。

 安倍政権の諸政策に関し、中国に対し「いたずらに緊張関係を煽るべきではありません」と批判されています。

 ・・・

 因果が逆なのです。
 今東アジアで軍事的緊張が高まっている原因は主として中国による一方的な軍事拡張にあります、安倍政権は対抗上日本の安全保障を守るために安保法制などの改正に着手しているだけです、結果です。
 ここ20年で日本を取り巻く東アジアの安全保障環境は大きく変貌しました。
 中国の著しい軍事的台頭です。
 安保法制や安倍政権を批判する人々はなぜこの冷徹な現実を無視できるのでしょう。
 本当に平和を求めてデモをするとならば、国会議事堂ではなく、まず中国大使館の前でデモすべきではないのでしょうか?


(木走まさみず)

笑止!抗日戦争勝利・軍事パレードひな壇の『三馬鹿』状態!!

 中国主催の「抗日戦争勝利・世界ファシズム戦争勝利70周年記念式典」の軍事パレードでありますが、お見事であります。

 中央には中華人民共和国習近平国家主席がおわします。

 その右にはロシア連邦ウラジーミル・プーチン大統領であります。

 また、その左には韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領であります。

 ・・・

 習近平国家主席中国共産党って、日本軍に勝ちましたか?

 確かに日本は70年前、ポツダム宣言を受諾、日本軍は連合国に「無条件降伏」いたしました。

 その連合国の中に中国も入っておりますが、それは中華民国すなわち重慶政府(蒋介石を長とする国民党政府)に対してであります。

 実際の中国戦線において日本軍の主敵は国民党政府軍でありました、山岳地帯でほそぼそとゲリラ戦を行っていた人民解放軍共産党軍)ではありませんでした。

 ほとんど戦ってもいないのに「抗日戦争勝利」を主催して祝うのはこっけいでもあります。

 で、ロシア連邦ウラジーミル・プーチン大統領、あなたもおかしいですよね。

 日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連軍による侵略、奇襲攻撃は、日本が降伏する6日前の1945年8月9日未明であります。

 終戦間際の1週間しか戦っていないのに、しかも日ソ中立条約を一方的に破棄した奇襲攻撃なのに、「抗日戦争勝利」とは笑えます、カッコ悪すぎです。

 最後に韓国の朴槿恵大統領、あなたです。

 あなた、どんな立場で中国共産党主催の「抗日戦争勝利・世界ファシズム戦争勝利70周年記念式典」に参加しているんですか。

 あなた戦勝国じゃないでしょ、そもそも当時は日本だったでしょ、あなたの国なんてなかったじゃないですか。

 あなたのお父君だって満州国で日本軍将校として戦われてたじゃないですか。

 ・・・

 読者のみなさん。

 まともに日本と戦っていない国の3人が、「抗日戦争勝利・世界ファシズム戦争勝利70周年記念式典」の軍事パレードでひな壇に並んでいるのであります。

 笑止です。

 どっちが歴史ねつ造なんだか、馬鹿丸出しの『三馬鹿』状態なのであります。



(木走まさみず)

「喪屍肉在中国」(ゾンビ肉は中国にあり)〜10万トン以上のゾンビ肉没収も今日も中国は平常運転

 今回は小ネタです。

 中国語でゾンビは「喪屍」という言葉が使われるそうですが・・・

 「食は広州に在り=食在広州」ということわざがありますが、中国は広州から延与光貞記者による、とんでもない「ゾンビ肉」のニュースが飛び込みました。

 さしずめ「喪屍肉在中国」(ゾンビ肉は中国にあり)といったところでしょうか。

 うむ、国営新華社通信などが伝えたところでは、中国の税関当局が冷凍肉の密輸グループを摘発したところ、1970年代、80年代の肉が流通していたことが分かったそうであります。

(参考記事)

「ゾンビ肉」、中国で流通 一部は70年代生産の記録
広州=延与光貞
2015年6月30日05時01分
http://www.asahi.com/articles/ASH6R5JJ9H6RUHBI01W.html

 うーん、驚くのはその量の多さであります。

 税関当局は全国で20以上の密輸グループを摘発したそうで、鶏の手羽先や足、牛肉など10万トン以上、計30億元(約593億円)相当の肉を没収したとのことです。

 で、一部の包装に、70年代、80年代に生産されたとの記録があったというわけです。

 でなんで40年前の肉が流通したかと言えば、密輸肉の原産国は米国やブラジルなどで、長期保存の経緯は明らかでないが、中国メディアは「戦時用に備蓄されていた肉ではないか」などと推測しているそうです。

 で、最悪なのが、湖南省の摘発例では、いったん香港に集められた後、ベトナム経由で密輸。途中、冷凍車を使わずに溶けて腐り、再び冷凍された肉もあったのだそうです。

 で、このゾンビ肉、牛肉の市場価格は通常、1キロ80元(約1600円)程度だが、密輸肉はその半値程度だった、と。北京、天津、重慶の各市や、河南、四川、湖南、広東など各省のスーパーやレストランに流通していたとみられるそうです。

 で、肉は検疫を受けていないため、鳥インフルエンザ口蹄疫(こうていえき)などに感染していても、そのまま流通していた可能性があるといいます。

 ・・・

 うーん、ここ重要なんですが、この記事で「10万トン以上」としているのは、あくまで税関当局が今回没収したゾンビ肉の量なのでありまして、今までにすでに流通してしまった肉の量や、税関当局が見過ごしてしまっているであろうゾンビ肉の総量は、全く不明な点であります。
 ゾンビ肉がどんだけ流通してしまったのかようわからんわけです。
 で、40年前のしかも一部「冷凍車を使わずに溶けて腐り、再び冷凍された肉」も含まれるゾンビ肉が、広く「北京、天津、重慶の各市や、河南、四川、湖南、広東など各省のスーパーやレストランに流通していたとみられる」わけです。
 ウップ、であります。

 それを食したと想像するだけで気持ち悪くなりますね。

 中国よたいがいにしろよ、といいますか、食の安全とかの次元ではくくれない異次元のニュースではあります。

 これ普通の国なら大ニュースになり食肉市場がパニックになるのは間違いなく、市民の苦情が殺到、政府の管理責任が厳しく問われ、原因解明と再発防止の対策が講じられるであろう大問題に発展するわけですが、中国の場合、公営通信社がさらっと報道してそれで何もないがごとくおしまいなところが、ある意味、ゾンビ肉が流通した事実以上に、恐ろしいところなのであります。
 今日も中国は平常運転なのであります。
 ふう。



(木走まさみず)



<追記>(2015.06.30 15:15)

 新たな情報が入りましたので追記です。

(参考記事)

「ゾンビ肉」 中国で出回る「消費期限40年前」の冷凍肉・・・食生活の「スリラー」=中国メディア
2015-06-30 11:33
http://news.searchina.net/id/1579597?page=1

 上記サーチナ記事によれば、「ゾンビ肉」の中には「大量の有害菌や有毒物質が残る」状態で「腐敗」したものもあるという話であります。

長期に渡る保存中に温度が摂氏0度以上になった場合には有害菌が増え腐敗する。再冷凍されても、肉の中には大量の有害菌や有毒物質が残ることになる。

 さらに、「ゾンビ肉」は「表面が酸化して黒く変色しているので、消費者に直接売ること」はできず、「煮込んだり油で揚げるなどの処理をすることで、正常な肉と区別がつきにくいようにしていた」そうであります。

肉のかたまりは表面が酸化して黒く変色しているので、消費者に直接売ることはせず、飲食店向けに流通していた。煮込んだり油で揚げるなどの処理をすることで、正常な肉と区別がつきにくいようにしていた。

 なんといいますか、すごいな、と。

 特にここ、「消費者に直接売ることはせず、飲食店向けに流通していた」ところ。

 なんのてらいも屈託もないこの「流通手段」はいかがでしょう。

 もちろんこの一件だけで中国からの輸入食材全般の安全性について語るわけにはいきませんが、当ブログの大好物であります『黒酢の酢豚』は、中国出張の折には食すのを当面控えようと固く決意いたしました次第です。

 「煮込んだり油で揚げた」「表面が酸化して黒く変色している」「ゾンビ肉」かも知れませんからね。

 しかしなあ。

 キーボードたたいているだけでも、ウップ(苦笑)なのではあります。

 ちょっと、ひでえなあ、と。

海洋強国を目指し軍事大国化にまい進する中国〜日本の集団的自衛権についての建設的積極的議論が今こそ不可避な理由


■前提としての知識:中国の軍事費膨張を正確な国際統計資料で検証しておく(特に対日本比較)

 国際情勢の変化の軍事支出の増減に対する影響力を検証する資料として、信用性が高く評価されているデータベースとして、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の統計データがあります。

Stockholm International Peace Research Institute "Yearbook"
http://www.sipri.org/

 このデータベースより、平成に入ってからの26年間の、中国と日本の1989年から2014年までの軍事費の推移を表にまとめてみましょう。

 なお数値は当時のレートで米ドル換算しています。

■図1:日本と中国の軍事費推移(1989−2014)

 さて平成元(1989)年(グラフの一番左)には 中国18336百万ドル、日本46592百万ドルであった両国の軍事費は平成15(2003)年(グラフ中央あたり)で逆転し、平成26(2014)年(グラフの一番右)では、中国190974百万ドル、日本59033百万ドルと3倍以上の差がついています。

 1989、2003、2014各年の両国の軍事費の比較を円グラフで視覚化してみましょう。

■図2:日本と中国の軍事費比較1(1989、2003、2014)

 より理解しやすいようにそれぞれの年の日本の軍事費を1としての中国の軍事費の割合を視覚化してみましょう。

■図3:日本と中国の軍事費比較2(1989、2003、2014)

 検証した通り、過去26年で日中の軍事費は日本:中国で1:0.39と日本のそれが中国の軍事費の2.5倍であった26年前から完全に逆転し、最近では日本:中国で1:3.24と中国の軍事費は日本の3倍以上に膨れ上がっています。
 ・・・

 さてさてこの26年で10.46倍と驚異的なペースで軍事費を拡大している中国ですが、上記グラフで確認できますが、同時期日本の軍事費がほぼ横一線であることと対比すれば、今東アジアの軍事力のパワーバランスが大きく中国寄りに変動していることは明白です。

 このグラフが、日本はいまこそアメリカや同盟国との集団的自衛権について建設的かつ積極的に議論すべきである、冷徹な国際状況のすべてを物語っているわけです。

 中国の急速な軍事的膨張を日本一国で対抗する手段は現実としては策がないのですから。

 では、中国はその膨大な軍事費の増大によって何を目指しているのでしょうか。

 それは「海洋強国」建設にあります。

 ・・・

南シナ海埋め立て中国軍事基地化に「強い反対」 G7、問題を共有

 ドイツ・エルマウで開かれている主要7カ国首脳会議(G7サミット)で7日、安倍首相は海洋進出を加速化する中国を念頭に、「東シナ海南シナ海で緊張を高める動きがあることについて、一方的な現状変更の試みは放置してはならない」と訴えた模様です。

 また米国も「特に南シナ海での航行の自由が混乱したら、米国、そして世界経済に深刻な影響が及ぶ。これはG7各国にとっても同じで、米国特有の問題ではない」(アーネスト大統領報道官)が強調した模様です。

(参考記事)

南シナ海埋め立てに「強い反対」 G7、問題を共有
エルマウ近郊=内田晃、奥寺淳2015年6月8日10時18分
http://www.asahi.com/articles/ASH6830WYH68UTFK002.html?iref=comtop_6_01

(参考エントリー)

2015-04-10 ■[中国]中国による『砂の万里の長城』(Great Wall of Sand)、その別次元の光景を見よ!〜フィリピンが領有を主張している スプラトリー諸島で勝手に「サンゴ礁破壊」して軍事基地を構築する中国
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150410

 さて、中国にとり領土紛争はすべて「海洋国土を守る聖なる防衛戦」との位置づけであることを再認識しておきましょう。

 この問題は一年前当ブログにて中国の意図をわかりやすく視覚化するために作図して取り上げたことがあります。

(参考エントリー)

2014-05-26 ■[中国]中国にとり領土紛争はすべて「海洋国土を守る聖なる防衛戦」だ〜日本はいまこそ集団的自衛権について建設的かつ積極的に議論すべき
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140526

 ・・・

■中国側の視点に立つために、中国起点で90度回転して東アジア地図を俯瞰して見る

 中国がなぜ国際的摩擦を顧みずに「海洋強国」建設にこだわるのか、あくまでも中国側の視点に立って考察してみたいです。

 まず、中国側の視点に立つために、中国起点で90度回転して東アジア地図を俯瞰して見ましょう。

■図4:中国起点で90度回転して俯瞰する東アジア地図

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150410

 実は中国は「海洋強国」とは名ばかり、大洋に進出するためには、北は、朝鮮半島、日本列島に阻まれ、中央には琉球諸島、台湾、フィリピン諸島に阻まれ、南にはマレーシアやインドネシア諸島、インドシナ半島に囲まれていることが、この図で見るとよく理解できます。

 中国はその広大な国土とは裏腹に、海岸線は、東シナ海(East China Sea)と南シナ海(South China Sea)に面しているだけであり、その排他的経済水域(EEZ)は約88万km2と日本の約1/5に過ぎません。
 中国から見れば、中国の海は、北朝鮮、韓国、日本、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム等に包囲されており、東シナ海(East China Sea)と南シナ海(South China Sea)の制海権を失えば簡単に海上封鎖されてしまう、地政学的に脆弱な条件のもとにあるわけです。
 つまり中国は東シナ海南シナ海のわずか2つの海洋への入口しか有さず、これは中国がライバル視している他の軍事大国、アメリカやロシア、インドと比較して、海岸線が狭いということは圧倒的に軍事的に不利なことを意味しています。

 そこで中国は、1982年12月10日国連海洋法条約が採択されたのを機に、国連海洋法条約が導入した排他的経済水域、大陸棚制度の確立によって、中国は自国の管轄海域はそれまでから300万平方キロメートルに、排他的経済水域(EEZ)は12 カイリから 200 カイリに拡大したことを、一方的に宣言します(米国や日本などはこの主張を認めてはいません)。

 国連海洋法条約後、中国海軍では管轄海域を領土的なものと観念し、これを他国から防衛すべきであるとの思考が強まります。1982 年に海軍司令員に就任した劉華清は、1985年12月20日、海軍幹部による図上演習総括会の席において、新しい内容の「近海防御」を海軍戦略として正式に提起します。1986年1月25日に開かれた海軍党委員会拡大会議において、劉華清は「近海防御」の海軍戦略の詳細を説明しています。

 海軍戦略の制定にあたってとくに強調されたのは、領海主権と海洋権益の防衛であります。

 劉は、国連海洋法条約に基づき、中国は 300 万平方キロメートルあまりの管轄海域を設定できると主張し、これらの海域と大陸棚を中国の「海洋国土」と表現します。さらに劉は、黄海東シナ海南シナ海は「中国が生存と発展を依拠する資源の宝庫と安全保障上の障壁」であるが、「歴史的原因により、海洋資源開発、EEZ の境界画定、大陸棚、一部の島嶼、特に南シナ海では周辺諸国との間で争いと立場の違いがある」と指摘します。この状況下で海洋国土を侵犯されないためには、海軍は「戦略軍種」として海軍戦略を持つべきであると論じたのであります。

(関連レポート)

現代海洋法秩序の展開と中国
毛利 亜樹(同志社大学 助教
http://www2.jiia.or.jp/pdf/resarch/h22_Chugoku_kenkyukai/06_Chapter6.pdf

 これにより東シナ海南シナ海は中国に取り、「中国が生存と発展を依拠する資源の宝庫と安全保障上の障壁」となり、第一列島線(First Island Chain)と呼ばれる対米防衛線が確立されます。

 第一列島線内の海は中国軍にとって「自国領海」に準ずる「守るべき海」とされたわけです。

■図5:東シナ海南シナ海を安全保障上の障壁とする第一列島線

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150410

 ・・・

第一列島線内のパラセル諸島スプラトリー諸島尖閣諸島をめぐる紛争はすべて「海洋国土を守る聖なる防衛戦」

 国連海洋法条約を受けて、中国は海洋に関する国内法整備にも注力いたします。

 1992年2月25日、「中華人民共和国領海および接続水域法」(以下、「領海法」)が施行され、他国と領有権争いのある島嶼を中国の領土と明記して注目されます。

 台湾、南シナ海パラセル諸島スプラトリー諸島などとともに尖閣諸島を中国の領土と規定し、1971年以来の尖閣諸島に対する領有権の主張を国内法で規定いたします。

 これらの領有権の主張を前提に、この法律は、中国が権利を持つと主張する接続水域において、中国の法律に違反する外国船舶に対し、他国の領海に入るまで追尾する継続追跡権を軍艦、軍用機、政府の授権を受けた船舶および航空機に与えています。

 ここにいたり、国際法上公海であるはずの東シナ海南シナ海および海域諸島が、中国にとって「中国が生存と発展を依拠する資源の宝庫と安全保障上の障壁」である「内海」的存在であることが、軍事的戦略としてだけでなく、国内法上においてもその整備が完成いたします。

 ここで、パラセル諸島におけるベトナムなどへの覇権、スプラトリー諸島におけるフィリピンなどへの覇権、および尖閣諸島における日本などへの覇権、これらはすべて「海王強国」を目指す中国にとって、「海洋国土を守る聖なる防衛戦」となったわけです。

■図6:東シナ海南シナ海における主な領土紛争

✖1:尖閣諸島(対日本など)✖2:パラセル諸島(対ベトナムなど) ✖3:スプラトリー諸島(対フィリピンなど)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150410

 ・・・

■まとめ

 中国は、いま検証してきたように、「国家百年の計」とも申せましょう、緻密に計画された極めて長期に渡る海洋戦略を実行してまいりました。

 その戦略はあくまで中国が主体的に構築し実践しているものであり、中国にとって一周辺国である日本の政権が媚中派であろうと嫌中派であろうと、その日本政府の政策によって大きく方針が変換されるような受動的なものでは決してありません、ここが極めて重要です。

 ならば、このタイミングで日本が集団的自衛権を検討することは、当然であろうと考えます、むしろ遅すぎとも言えましょう。

 対中国においてアメリカ・オーストラリアはもちろん、フィリピンやベトナムなどのアセアン諸国、あるいはインドなどとの連携を深める意味でも、日本はいまこそ集団的自衛権について建設的かつ積極的に議論すべきタイミングなのだと考えます。



(木走まさみず)

中国による『砂の万里の長城』(Great Wall of Sand)、その別次元の光景を見よ!〜フィリピンが領有を主張している スプラトリー諸島で勝手に「サンゴ礁破壊」して軍事基地を構築する中国


 さて防衛省沖縄防衛局は辺野古沿岸部に沈めたコンクリート製ブロック(アンカー)について、「サンゴ礁などの生態系に大きな影響は与えていない」とする見解を公表しました。

(読売新聞記事)

辺野古ブロック、サンゴに影響なし…防衛局見解
2015年04月10日 10時45分

 防衛省沖縄防衛局は9日、沖縄県の米軍普天間飛行場宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向けた準備作業のため、辺野古沿岸部に沈めたコンクリート製ブロック(アンカー)について、「サンゴ礁などの生態系に大きな影響は与えていない」とする見解を公表した。

 これによると、防衛省は2月にアンカー周辺の75地点を調べた。その結果、94か所でサンゴの損傷を確認したが、傷が見つかったサンゴはいずれも小さいものばかりで、最大でも幅45センチ、全体の94%は幅20センチ以下だった。

(後略)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150409-OYT1T50094.html

 うむ、「94か所でサンゴの損傷を確認したが、傷が見つかったサンゴはいずれも小さいものばかりで、最大でも幅45センチ、全体の94%は幅20センチ以下だった」とのことであります。

 さて同じ記事が琉球新報が報じますと「ブロック設置でサンゴ94群体破壊」と真逆の見出しになります。

琉球新報記事)

ブロック設置でサンゴ94群体破壊 国監視委が批判
2015年4月10日

 【東京】米軍普天間飛行場辺野古移設計画をめぐり、浮標灯(ブイ)を設置するためのコンクリートブロックがサンゴ礁を破壊している問題で、沖縄防衛局が2月に調査を実施したところ、94群体のサンゴを破壊していたことが9日、明らかになった。同局が移設作業に伴う環境保全策を検討する環境監視等委員会の第4回会合を都内のホテルで開き、調査状況を報告した。ブロック設置をめぐり、委員から作業の進め方や手法について批判も相次いだ。
 防衛局によると、許可区域内外でブロックが設置された周辺75地点を調査し、サンゴの破壊が確認された。同局は破壊されたサンゴのうち94%が10〜20センチで「問題はない」としている。
 ただ委員会の中村由行委員長(横浜国立大大学院教授)によると、委員からは「許可区域内外にかかわらず、もっと丁寧な進め方をすれば、破壊が避けられた部分があったのではないか」と批判が上がった。委員会の総意としても「原則、環境アセスメントと同じように丁寧に工事をすべきだ」と指摘する見解が示された。一方、サンゴの破壊について「生態系への影響は軽微」としている。

(後略)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241634-storytopic-271.html

 うーむ、読売では「損傷」という表現が琉球新報では「破壊」と強調した表現になっていますが、しかし、琉球新報の記事においてすら、サンゴの破壊について「生態系への影響は軽微」との専門家の意見が添えられております。

 ・・・

 サンゴ礁破壊ですか。

 今日は読者の皆さんに、別次元の「サンゴ礁破壊」の光景をご確認いただきましょう。

 アジア太平洋を管轄するハリー・ハリス米太平洋艦隊司令官は、「しゅんせつ船とブルドーザーを使い、『砂の万里の長城』を築いている」とあからさまな中国批判を繰り広げています。

 中国がここ数カ月、猛烈な勢いで進めている南シナ海岩礁などの埋め立てのことです、中国はフィリピンなど東南アジアの国々と領有権を争っている島や岩礁のうち、支配している7カ所で、「前例のない規模」(ハリス氏)の埋め立て工事を進めているわけです。

 中国による工事のすさまじさは、米戦略国際問題研究所(CSIS)がホームページで掲載している写真などをみると一目瞭然であります。

 そのあまりのすさまじさに米軍関係者は『砂の万里の長城』=‘Great Wall of Sand’だと呼称しています。

(参考記事)

中国が「砂の万里の長城」、米軍に広がる危機感  編集委員 秋田浩之
2015/4/10 6:30
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO85428750Y5A400C1000000/

 『砂の万里の長城』=‘Great Wall of Sand’をトップに画像を張り付けている米戦略国際問題研究所(CSIS)トップページはこちら。

■米戦略国際問題研究所(CSIS)トップページ

http://csis.org/

 ちょっと見づらいですから、WSJのスライド画像をご紹介。

2015 年 2 月 19 日 10:36 JST
■領海拡張狙う中国の野心示す衛星画像

http://jp.wsj.com/news/articles/SB11096553489394754382504580470630428303818#1

http://jp.wsj.com/news/articles/SB11096553489394754382504580470630428303818#7

http://jp.wsj.com/news/articles/SB11096553489394754382504580470630428303818#9

http://jp.wsj.com/news/articles/SB11096553489394754382504580470630428303818#13

 まさに、『砂の万里の長城』=‘Great Wall of Sand’であります、写真によってはしゅんせつ船もばっちり撮れています。

 まわりの砂をかき集めてサンゴ礁の上にコンクリート工場まで立てて、軍用基地を作りまくっているのがご覧いただけると思います。

 サンゴ礁の上に土砂をコンクリートで固めて埋め立てて、その上に飛行場作ったり、ヘリポート作ったり、セメント工場作ったり、船着き場作ったり、やりたい放題であります。

 しかもここはフィリピンがその領有を主張している、世界有数の美しいサンゴ礁の島々、 スプラトリー諸島なのであります。
 これぞ中国による別次元の「サンゴ礁破壊」の光景であります。
 うむ、「環境破壊」に国境はないはずです、そもそも中国領とは認められていない場所を勝手に破壊して軍事基地を作っているわけです、とんでもない話です。
 沖縄県知事がせっかく来週中国へ行かれて要人と会われるのですから、こっちの中国による別次元の「サンゴ礁破壊」にもクレームをおっしゃればいかがでしょうか?
 え、中国に対する内政干渉だ、と?

 だから、スプラトリー諸島は中国領って世界中誰も認めてないのですから、中国の内政からははみ出していますから大丈夫ですって。

 中国の心証を害したら中国要人との会談にさしさわるだろう、と?

 うーむ、軽くダブスタなような・・・

 ・・・

 大変失礼いたしました。

 ふう。



(木走まさみず)

エボラと中国、最悪の組み合わせが現実味を帯びてきた

 22日付けエキサイトニュース記事から。(※リンク切れています)

エボラウイルス陽性43人、流行地域から戻った人を検査―中国

中国メディアが現地衛生当局の情報として伝えたところによると、同国南部の広東省エボラウイルス保有しているとみられる人、43人が見つかった。露国営メディア「ロシアの声」の中国語電子版が22日伝えた。

広東省衛生・計画生育委員会の陳元勝主任によると、エボラ出血熱の流行地域から戻った人を対象に検査を行った結果、43人が陽性だった。
今年8月23日以降、世界で最も危険とされるエボラ出血熱の流行地域から広東省に戻った人は8672人。
広東省広州市で22日に始まった中国輸出入商品交易会(広州交易会)の第2期では外国から多くの人が訪れるため、現地当局は入国者の管理を厳しくし、ウイルス感染の防止に努めることを決めた。
現地メディアは「中国ではまだ、エボラ出血熱の症例は確認されていない」と強調している。

http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20141022/Xinhua_99145.html

 うむ、露国営メディア「ロシアの声」の中国語電子版が22日伝えたところ、「広東省エボラウイルス保有しているとみられる人、43人が見つかった」ということであります。

 上記記事はデマであったようでエキサイトニュースもネット上から削除しています、また上記情報源の「ロシアの声」においても、「43人は、分析の結果、陰性だった」という新華社通信の内容を報道、事実上誤報を認めた形です。

エボラ実験薬 患者で直接臨床試験

中国南部の広東省エボラ出血熱に感染している疑いが持たれていた43人は、分析の結果、陰性だった。新華社通信が伝えた。だが広東では、衛生管理の強化が続いている。アフリカ諸国からの入国者たちは、エボラ出血熱の感染拡大を引き起こす潜在的な危険性を持っている。

(後略)

http://japanese.ruvr.ru/2014_10_22/279047331/

 うむ、今回はデマでよかったわけですが、中国でのエボラ発症の可能性は逼迫している模様で、このような状況下、中国ではここ数日エボラ発症のデマが流れては消えています。

 22日付け日経ビジネス記事から。

エボラとSARSと香港

(前略)

 エボラ出血熱の問題が連日、国際メディアのトップニュースになっている。このニュースには中国人も香港人も敏感になっていて、その証拠に中国のネット上では、初のエボラ出血熱患者発見、といったデマがちらほら流れている。

 先日、「浙江省寧波で中国初のエボラ熱患者が発見された。この病気は致死率90%以上。専門家の推測ではエボラが中国に流入したのは10日前だという。子供たちや家族には帰宅したら必ず石鹸での手洗いをさせ、露店での食事は控えさせるように。食事は家で必ず熱を通したものを食べること」という書き込みが微博で流れた。寧波市衛生当局の公式アカウントはすぐさま、この情報をデマだと否定し、「寧波の某病院でナイジェリア男性が10月16日に(エボラの疑いで)観察入院したが、体温は正常であり医学的に問題ないと判断し、きょう(20日)に観察を解除した。目下、寧波市ではエボラの疑いの患者はいない」と説明した。17日には広州の交易会の会場で、エボラ患者が見つかり、広東省第二病院に隔離されている、という情報がネット上に流れた。地元紙記者がすぐさま地元衛生当局に確認し、それがデマであると発表した。このほか、北京、上海、香港などでも、エボラ発生!のデマは流れては消えた。

(後略)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20141021/272828/?P=1

 うむ、エボラに関して中国人がかなりナーバスになっています、浙江省、広州、北京、上海、香港各地のデマ流布につながっているようです。

 上記「ロシアの声」記事は「広東省では今も3000人以上が、エボラ出血熱に感染している疑いが持たれている。これらの人々は全員、エボラが猛威を振るっているアフリカ諸国から戻ったばかりで、その後、隔離された」ことや、「中国政府は、エボラの流行が深刻な脅威を与えていることを認めている」事実を強調しています。

広東省では今も3000人以上が、エボラ出血熱に感染している疑いが持たれている。これらの人々は全員、エボラが猛威を振るっているアフリカ諸国から戻ったばかりで、その後、隔離された。今のところ中国、そしてアジア地域全体でも、エボラ出血熱の感染は確認されていない。しかし中国政府は、エボラの流行が深刻な脅威を与えていることを認めている。これを受け、アフリカに実験ワクチンJK-05を数千回分送ることが決まった。JK-05は、中国軍向けに中国の軍事医学アカデミーで開発されたもので、エボラ出血熱の治療薬としての臨床試験は完了していない。高等経済学院の教授で、エビデンスに基づく医療(EBM)専門家協会の会長を務めるワシリー・ヴラソフ氏は、現在の状況を受け、中国の医療関係者たちは、必要な場合に、アフリカにいる中国人に実験薬を投与する許可を得たと述べ、次のように語っている。
「アフリカには中国人が大勢いる。そのため、彼らが第一の保護対象となる。しかし、この実験薬は、実際に保護の役目を果たすのだろうか?この薬は本当に効果があるのだろうか?それを確かめることができるのは、臨床試験だけだ。しかし残念なことに、現在、エボラのような致死率の高い病気の治療法に関する質の高い臨床試験を行うことが大きな問題となっている。少なくとも、いま米国が計画しているワクチンの臨床実験をアフリカで実施するのは、非常に難しいだろう。」

 うむ、エボラと中国、最悪の組み合わせが現実味を帯びてきています。

 エボラがアジアで発症するとしたら中国の可能性が一番高いと言えましょう。
 
 言うまでもなく中国とアフリカの交易は過去最大化しています。

 例えば貿易都市の広州市では人口の2%、20万人以上がアフリカ系で、アフリカ人街が出現しています。

広州、アフリカ人が最も多く住むアジア都市に―中国メディア
http://www.recordchina.co.jp/a93497.html

 中国で深刻なのはアフリカ人などの外国人の「三不(不法入国、不法滞在、不法就労)」問題は、これまでずっと、広州全体が頭を抱える難問となっていることです。

 入出国の管理がずさんなのです。

 また、アフリカ全体に暮らす中国人は数百万人にのぼるとされ、シエラレオネリベリアギニアなどエボラ感染地域に暮らす中国人も2万人以上いるといいます。

アフリカに立つ100万人の中国人
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20131217/257142/

 毎月、膨大な数の人々がアフリカと中国の間で流動しているわけです。

 中国政府が「エボラの流行が深刻な脅威」と認めていることも理解できます。

 そして中国の感染症対策がもともと甘いことも不安要因です。

2014.10.6 20:29
中国広東省デング熱2万人超 6人死亡
http://www.sankei.com/world/news/141006/wor1410060049-n1.html

 日本ではデング熱感染が今年159例でたということで大流行だと騒がれましたが、中国では広東省だけで3万7000例以上の感染者を出しています。死者こそ全国で6人に収まったので、日本でもあまり問題視されませんでしたが、広東省の人口が96,38万人と日本より少ないことを考慮すると、これは実は深刻な事態であったといっていいでしょう。

 人口が密集し公衆衛生意識が薄い中国では、一旦ウイルスが広がると、当局の感染症対策の脆弱さとあいまって、その流行の速度も規模も桁が違います。

 さらに最悪の事態は、もしエボラ患者出現が起こっても中国当局がその事実を隠蔽し、エボラ流行への初動対策が大きく後手を踏んでしまい、大流行を許してしまうことです。

 これは杞憂ではありません、発症の事実が発覚しても過去に中国では、エイズSARSといった感染症の拡大を当局の情報隠ぺいと報道統制によって許してしまった前科があるからです。

 SARS蔓延の2003年、すでに200人以上の感染者が出ていたというのに、中国衛生当局は感染は完全にコントロールできているというコメントを繰り返すだけで、感染者拡大の事実を完全に隠蔽いたしました。

 もし、退役軍医の蒋彦永が米TIME誌に命がけで告発しなかったならば、SARSによる死者がどれだけ増えていたかわからないのです。

 このときの隠蔽は、江沢民政権から胡錦濤政権に移行して最初に開かれる全人代全国人民代表大会=国会のようなもの)を無事に行うためだった。国民の命より政治イベントを優先させたわけです。

失敗事例 > SARS流行 - 畑村創造工学研究所
http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CZ0200721.html

 2008年、北京五輪の無事開催のために、メラミンミルク事件の発生を隠蔽し、赤ん坊の健康被害拡大を許した事件もありました。

中国メラミン混入事件(2008/09)
http://www.safefood.jp/2010/09/30/%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E9%A8%92%E5%8B%95200809/

 もし、中国国内でエボラ出血熱が発生した場合、中国が自国の立場を守るために、過去の失敗を繰り返し初期に情報統制して事実を隠蔽した場合、そしてその隠蔽期間に、患者と接触した少なからずの感染者が中国国内や海外に流動してしまった場合、エボラ拡散は不可避となりましょう。

 まさに悪夢です。

 エボラと中国、最悪の組み合わせが現実味を帯びてきています。



(木走まさみず)

「中国の空母、その最大の目標は尖閣諸島の奪還だ」(韓国紙報道)について海自OB氏の意見を求める〜「今日の極東情勢の心情的ねじれ具合を象徴している記事構成が興味深い」

 27日付けレコードチャイナ記事によれば、中国・環球時報は記事「中国空母の最大の目標は日清戦争で占領された尖閣諸島の奪回だ」を掲載したそうです。

中国の空母、その最大の目標は尖閣諸島の奪還だ―韓国紙
配信日時:2014年7月27日 22時32分

2014年7月26日、環球時報は記事「中国空母の最大の目標は日清戦争で占領された尖閣諸島の奪回だ」を掲載した。

7月25日は日清戦争勃発120周年の記念日。中国各地で記念式典が開かれているほか、メディアでも屈辱の歴史を振り返る記事が掲載されている。また、日清戦争の最中に日本が尖閣諸島編入閣議決定したことから、中国では尖閣諸島日清戦争で奪われた領土との認識も広がっている。

韓国紙・毎日経済は日清戦争120周年記念式典の開催は中国が国恥を忘れていないことを示していると論評。中国はすでに初の空母を就役させたが、その最大の目標は日清戦争で奪われた尖閣諸島の奪還だと指摘している。(翻訳・編集/KT)

http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=91720

 遼寧(りょうねい)は、中華人民共和国ソビエト連邦で設計された航空母艦ヴァリャーグの未完成の艦体を入手し、航空母艦として完成させたものであります。2012年9月25日、正式に就役、基準排水量:55,000t、全長305.0mの「軽空母」であります。

 うむ、「中国空母の最大の目標は日清戦争で占領された尖閣諸島の奪回だ」とは穏やかならぬ記事なのでありますが、そもそもこの中国空母の能力とはどのようなものなのか、日本に取りどの程度軍事的脅威となるのか、当ブログは軍事的な知識は全くの素人でありますが、今回は当ブログが懇意にさせていただている海自OB氏に電話にて意見を伺いました。

(木走)「中国の空母、その最大の目標は尖閣諸島の奪還だ」この環球時報の記事を読んでの率直な感想を・・・
(海自OB氏)日清戦争勃発120周年の記念日にブチ上げた国威高揚的記事であろうと感じた。正直まともに実現性を論じる価値はあまりないのではないか?
(木走)海自として中国空母「遼寧」の戦闘能力についてはどう評価しているのか?
(海自OB氏)過大評価も過小評価もなく冷静に分析していると考えていい。そもそも中国海軍自身「遼寧」を「練習空母」と位置づけている。将来はともかく現状はパイロットの離着艦練度や航空母艦操舵練度が未熟であり、実戦配備できる状況にはないだろう
(木走)空母「遼寧」の現状の実力では尖閣諸島奪還は不可能であると判断して良いのか。
(海自OB氏)そもそも軽空母一隻のみでの尖閣奪還など中国軍も計画していないだろう。
(木走)では中国による尖閣奪還の現実的なシナリオはどのように想定されるか?
(海自OB氏)あくまでも個人的想定だが、軍事的には正規軍ではなく、民間の漁船団、武装海上警察の「海監」や「漁政」の船団を前面に立て、正規軍である中国海軍東海艦隊のフリゲート艦数隻がその後方で陣形を成す、そして上陸行為も正規軍ではなく一部の中国人漁民、実は元人民解放軍特殊部隊員などなのだが、の上陸や、武装警察の上陸が可能性としては一番想定しやすいだろう。
(木走)正規の軍を全面には立てないと?
(海自OB氏)中国軍はアメリカ軍との直接衝突を一番恐れているはずだ。正規軍を投入すれば展開によってはアメリカ軍との衝突リスクを高めることになる。
(木走)ズバリ中国による尖閣奪還の可能性は高いのか?
(海自OB氏)可能性の話はすべきでないだろう。日本としては、そのような衝突が起こらないように外交努力をしつつ、日米同盟を基軸に防衛力整備に真摯に努めることが肝要だと思う。 

 うむ、海自OB氏にはお忙しい中電話による取材に対して素人にも解りやすい解説をしていただき深謝いたします。

 電話取材の後の雑談で海自OB氏の指摘が興味深かったのです。

 この記事構成が今の極東情勢の雰囲気を象徴しているというのです、中国メディアの「中国の空母、その最大の目標は尖閣諸島の奪還だ」との報道に対し、韓国メディアが即座に「日清戦争120周年記念式典の開催は中国が国恥を忘れていないことを示している」との論評をしている点であります。

 北朝鮮と対峙しているはずの韓国が米韓・日米の軍事同盟から心情的に乖離するかのように北朝鮮支援国である中国への同調するかのような感情が垣間見えるような記事構成だとの、指摘であります。

 中国紙の記事自体は現時点では非現実的なブラフに過ぎないと思われますが、そのようなブラフ記事を積極的に取り上げる韓国紙の報道姿勢にこそ、今日の極東情勢の心情的ねじれ具合を象徴しているように感じられる、というわけです。

 ふう。



(木走まさみず)